地域おこし協力隊として移住し起業。ドローンと映像で挑戦を続ける。【東克洋さん】
宮崎県新富町で、ドローンや映像制作を活用した事業に取り組む東克洋さん。2023年に地域おこし協力隊として着任後、こゆ財団コーディネートのもと農薬散布や空撮、SNS運用など活動の幅を広げてきました。
そして2026年6月、3年間の任期を満了。地域おこし協力隊としての活動に一区切りをつけ、新たな事業者として歩み始めています。
なぜ新富町を選び、どのように新しい道を切り拓いてきたのでしょうか。東さんの歩みを伺いました。
挑戦の舞台は新富町。ドローンと映像で地域に貢献する

2023年7月、新富町地域おこし協力隊として着任した東克洋さん。宮崎市出身で、移住前は北九州市の企業で石油プラントの設計や現場監督として14年以上勤務していました。管理職まで経験したものの、「まったく違うことに挑戦したい」という思いが年々強くなっていったといいます。
現在は「AZUMA DRONE(アズマドローン)」と、クリエイティブ事業「ENCRAFT(エンクラフト)」を立ち上げ、ドローン空撮や映像制作、SNS運用代行、不動産VRコンテンツ制作など幅広く活動しています。
「ENCRAFT」という名前には、人や地域との「ご縁」をつなぎたいという思いが込められており、地域のクリエイターや事業者がつながり、新たな価値を生み出せるプラットフォームのような存在を目指しています。
宮崎へUターン、地域おこし協力隊制度を活用してドローン事業に挑戦

東さん自身、前職の現場でドローンに触れる機会はあったものの、本格的に仕事にしようとは考えていませんでした。
「飲食でも何でもよかったんです。ただ、自分がのめり込めるものを見つけたかった」と話す東さん。
そんな中で出会ったのが、農業分野で活用されるドローンでした。会社員が副業として農薬散布を行う事例を本で知り、将来性を感じたといいます。
ちょうどその頃、宮崎へ戻ることを考えていました。きっかけの一つは、お子さんの誕生です。現場仕事は単身赴任や夜勤も多く、家族と過ごす時間を十分に確保できないことに悩み「子どもの成長をもっと近くで見守りたい」といった思いが芽生え、働き方や暮らしを見つめ直す転機に。
その後、新富町に住む奥様の友人を通じて、新富町やこゆ財団の存在を知ります。地域の人とのつながりや挑戦を後押しする環境に魅力を感じ、「人とのつながりが、新富町を選んだ一番の理由」と振り返りました。
移住を検討していた当時、新富町では活動内容を自ら設計できる“フリーミッション型(起業型)”の協力隊員が多様な活動をしていました。決められた業務ではなく、自身で事業をつくれる環境に大きな魅力を感じたといいます。
農薬散布の挑戦から、映像制作へ

新富町に来た当初は、奥様の友人を通じたご縁はあったものの、地域とのつながりはほとんどなく、何もわからない状態からのスタート。
東さんが最初に取り組んだのは、ドローンを活用した農薬散布事業です。新富町は一次産業が盛んな地域のため、自身の新たな仕事として可能性を感じていました。
技術を身につけるため、北海道で約1か月間の研修にも参加。実際に町内の現場を経験する中で、想像以上にドローンの市場競争が進んでいることや、農地が細かく区切られているなど研修先との違いを実感しました。自分が思い描いていた形では、事業として成立しにくい現実も見えてきたといいます。
一方で、その経験はドローンそのものの可能性に気づくきっかけにもなりました。
もともと映像やテレビ、ミュージックビデオを見ることが好きだった東さん。「どうやって人の心を動かす映像を作るんだろう」と考えることにおもしろさを感じていたそうです。
こゆ財団でもSNS発信を強化する動きがあり、東さんは動画制作に携わる機会を得ました。もともと映像への関心もあったことから、制作を重ねるうちにその魅力に引き込まれ、映像撮影や編集の技術を磨いていったといいます。
こうした経験が、現在の映像制作やSNS運用の事業へとつながっています。不動産物件のVR内覧など、新たな需要も見えてきました。
その挑戦を支えたのが、人とのつながりでした。役場やこゆ財団の職員は、事業や暮らしの相談にも親身に寄り添い、人と人とをつなぐ役割を果たしてくれたといいます。
飛び込むことが得意なタイプではないという東さんにとって、そうしたサポートは大きな支えに。商工会への加入や地域との交流を通じて仲間が増え、少しずつ新富町に根を張っていきました。
新富にくるという決断をしただけで、自信を持っていい

こゆ財団が設立当初から掲げていた“世界一チャレンジしやすいまち”というビジョンについて、「あながち間違いじゃないと思うんです。挑戦を否定されない環境がある」と東さんは話します。
「会社を辞めたことを後悔したことは一度もない」。そう言い切れるのは、挑戦を支えてくれる人や環境が、この町にあったからでした。
現在は事業の基盤づくりに力を注ぐ一方、その先に見据えるのは自身の成功だけではありません。東さんは、雇用に限定しない新しい働き方を創出することで地域に貢献することも、地域おこしの一つの形ではないかと考えています。
終身雇用による安定が失われた時代だからこそ、複数の仕事を掛け持ちしながら、自分のスキルを生かして働ける社会をつくりたい。将来的には、地方で活躍するクリエイターの育成や、クラウドワークを活用した新しい働き方づくりにも取り組みたいと考えています。さらにその先には、主婦や学生、障がいのある方など、多様な人がそれぞれの強みを生かして活躍できる社会を思い描いています。
最後に、これから地域おこし協力隊や移住者として新富町で新たな一歩を踏み出す後輩たちへ、こんなメッセージで締めくくってくれました。
「ここに来るという決断をしただけで、自信を持っていい」
不安や迷いを抱えながらも、新しい土地へ飛び込み、自ら道を切り拓いてきた東さんだからこそ、その言葉には実感がこもります。
挑戦を受け入れ、人と人とがつながる新富町。この場所で、東さんの新たな挑戦はこれからも続いていきます。
