誰もが安心して過ごせる場所に。駄菓子屋『春夏秋冬』がつくるみんなの居場所【駄菓子屋・春夏秋冬/武田秋穂さん】
宮崎県新富町で、訪問看護師として働きながら、駄菓子屋「春夏秋冬(しゅんかしゅうとう)」を営む武田秋穂さん。
新富町新田地区にある小さな駄菓子屋に子どもたちが集まり、お菓子を選び、会話を楽しみ、それぞれの時間を過ごします。店内には懐かしい駄菓子や初めて見るお菓子が並び、大人も思わず童心に返ってしまうような空間が広がっています。
開業した背景には、子どもたちが人との関わりやお金の使い方を学び、誰もが安心して立ち寄れる場所になってほしいという願いがあります。
駄菓子屋オープンについて、また秋穂さんが今感じている想いを聞きました。
駄菓子は子どもも大人もワクワクするもの

右下:秋穂さんセレクトの駄菓子
駄菓子屋「春夏秋冬」は、自宅車庫横の倉庫のような小さなスペースを夫婦でリノベーションしてつくられました。もともとは夫・剣二さんの趣味部屋になる予定でしたが、「ここを地域の居場所にできないか」と考えるようになりました。
駄菓子屋をオープンさせたのは今年3月。秋穂さんは「子どもも大人もワクワクするものを考えた時に、思い浮かんだのが駄菓子でした」と話します。3人の子どもたちの名前に含まれる「春」「夏」「冬」、そして自身の名前に入る「秋」をとって「春夏秋冬」と名付けました。
店内は、トイ・ストーリー好きの剣ニさんが手掛けた子ども部屋風の空間。並ぶ駄菓子とあわせて、子どもも大人もワクワクできる雰囲気が広がっています。
陳列棚には定番から懐かしいもの、新商品まで80種類ほどの駄菓子が並び、子どもたちだけでなく大人も楽しめる空間に。秋穂さんは、利益を生むことより、子どもたちが楽しみながら過ごせる場所を続けていくことを大切にしています。
また、キャッシュレス決済が当たり前になりつつある今だからこそ、自分でお金を握りしめ、何を買うか考え、おつりを受け取る。そんな経験も学びになればと考えています。
店を開けるのは、秋穂さんの仕事が終わった平日の夕方や、子どもの習い事がない週末。Instagramと店先にのぼりを立てることで営業中をお知らせしています。週末にはイベントへ出店することもありますが、限られた時間の中で地域の子どもたちが集う場所を育んでいます。
“やりたかった暮らし”を実現するために、新富町へ

宮崎県美郷町出身の秋穂さんは、剣二さんの転勤に伴い鳥取県で6年暮らしていました。
転機になったのは、子どもの小学校入学。
家族でこれからどこで暮らしていきたいかを考えたとき、夫婦が思い描いたのは地元である宮崎での暮らしでした。鳥取県で過ごした6年間は大切な時間だった一方、日本海側特有の曇り空や冬の雪かき、アパートでの生活など、アクティブな秋穂さん家族は不自由さを感じることもあったと振り返ります。
「一軒家で広い庭のある家で、子どもたちをのびのび育てたい」。
そんな思いから3年前に宮崎へのUターン移住を決意。移住先として宮崎県内を検討する中で、剣二さんが以前新富町に10年ほど住んでいたこともあり、家族にとっての新富町での暮らしを具体的にイメージすることができました。
家探しのタイムリミットはわずか2日間。その中で出会った現在の住まいには、道路に面していない、子どもたちを安心して遊ばせられる庭があり、以前から憧れていた畑仕事ができるスペースもありました。
「ここなら、やりたかった暮らしができるかもしれない」。
そう感じたことが決め手となり、購入を決意しました。
宮崎に戻ってからの3年間はあっという間だったと話す秋穂さん。庭で遊び、畑を耕し、駄菓子屋を開き、地域とつながる日々は、「これまでで一番濃い時間」になっているようです。
人とのつながりから生まれる新富町での挑戦


新富町での暮らしは新しい挑戦にもつながっています。
見知らぬ土地だった新富町ですが、移住後すぐに始めた訪問看護の仕事やPTA活動を通じて地域とのつながりが広がっていきました。訪問先で野菜の苗の情報を教えてもらったり、地域の方から草刈りを頼まれたりと、人との交流が日常の中にあることも新富町の魅力だと感じています。
その一つが、今年から始めた米づくりです。地域の方から声をかけてもらったことをきっかけに、借りた田んぼで米づくりを始めました。7月には、地域の人たちと一緒に田植えも予定しています。
「子どもたちに、いろいろな体験ができる環境を残したいと思っています。」
田植えや収穫だけでなく、土に触れ、人と関わりながら食べ物ができる過程を知ることも大切な学びの一つ。秋穂さんは、地方での暮らしだからこそできる経験を子どもたちに届けたいと考えています。
「やってみたい」という気持ちに、地域の人たちが自然と手を差し伸べる。そんな出会いが、新富町での暮らしをさらに面白くしているのかもしれません。
家族への想いから地域の未来へ

新富町で暮らす中で、秋穂さんが考えるようになったことがあります。
それは、障がいのある若者の働く場についてです。障がいのある若者の就労環境について知る中で、誰もが働ける場づくりにも関心を寄せています。働きたくても、働く場所や選択肢が限られている現実に対し、いつか誰もが自分らしく地域の中で役割を持ち、安心して暮らせる環境をつくれないだろうか。将来への想いは、米づくりや駄菓子屋の活動にもつながっています。
駄菓子屋「春夏秋冬」が目指すのも、子どもだけの場所ではありません。子どもから大人まで、誰もがふらっと立ち寄り、誰かと話せる居場所です。
駄菓子屋、畑仕事、米づくり、 就労支援等々…。秋穂さんが思い描く一つひとつの挑戦や夢は、家族や地域の人たちとのつながりの中で、これから少しずつ形になっていくのではないでしょうか。
【駄菓子屋 春夏秋冬】

住所 宮崎県児湯郡新富町新田6153-1

