地域おこし協力隊

地域おこし協力隊

宮崎県の中央部に位置する人口約17,000人のまち、新富町。

2017年4月、そんな新富町で設立された地域商社「一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(略称:こゆ財団)」には、日本全国の移住希望者からの問い合わせが増え続けている。

その中の一人で、実際に新富町へ移住したのが、大阪府出身で東京都の一部上場企業のIT広告会社に勤めていた中村桂介さん。

現在、こゆ財団でマーケティングを担当している中村さんの中で、新富町にやってきた感覚は移住というより引越し。上場企業から身寄りもいない新富町へやって来た中村さんに、移住するに至った経緯や理由について伺った。

大企業に勤務するフラストレーション

−宮崎県新富町に移住したきっかけは?

とにかく、チャレンジしたかったんです。大きな会社であればあるほど、やりたいことを実行するまでに時間がかかります。稟議1つにしても、多くの承認を必要とするからです。そのため、やりたいことを実現できずに、与えれた作業をこなすような日々が続いていました。

そんな時に目にした「こゆ財団」の採用ページを見て、自分の経験と知識で地方が抱える悩みを解決できるような仕事がしたいと思って応募しました。

「やらない後悔」はしたくない

東京で開催された移住イベントにも登壇者として参加

—地方へ来ることに葛藤は無かったですか?

これまで、東京で生活していて、地方への生活に憧れて移住を検討している人が多くいました。私の場合は、地方での生活に憧れていた訳ではありませんでした。正直、車を持っていないので交通の便も不便ですし、大好きだった牛丼屋さんも近くにありません。

ただ、この町には私のやりたいことがあったのです。

—多くの人が地方移住に踏み切れない中、中村さんはなぜ実現できたのでしょう?

移住を考えている人の多くは、地方に移住することに対して、「収入が下がるから」とか「これまでの経歴が無駄になるから」とか、様々なリスクを口にします。しかし、視点を変えてみて私が一番にリスクだと感じたことは、やらないで後悔すること。

だから、私はこれまでの収入も経歴も手放すことができました。

移住というより“引っ越し”

—まさに、こゆ財団さんが伝えている「まずはやってみよう」ですね?

移住というと移り住むということで、その土地に骨を埋める覚悟のような結構重い言葉だと個人的に考えています。私の場合は、「新富町に引っ越してきた」という感覚です。

東京から何も知らない町にやってきて、自分のやりたいことに挑戦するための引越しです。もし、それが失敗してもまた東京に戻れば良いだけの話じゃないですか。さすがに、前の職場に復帰することはできないかもしれませんが、チャレンジする前よりは、確実に素晴らしい人生だと思います。

移住して感じた地方と東京に違い

—東京と宮崎の新富町を比べると、どんな違いがありますか?

何もかもが違います。街並みも違うし、人の数も星の数も違う。全てが違う環境ですが、この町の素晴らしさはやっぱり人だと思います。

特に驚いたのが、自然とこぼれる挨拶。道端ですれ違った子どもたちが元気に挨拶をしてくれるのです。東京ではまず考えられません。それがすごく気持ちよくて、私も今では自然に挨拶ができるようになりました。

—東京の企業で働いていた時と比べて、仕事面ではどうですか?

多くの大企業では、1つの仕事をするのにも基本的に分業だし、下手すると依頼先が別会社なんてこともあります。だけど、ここでは基本的に全部1人でやる必要があり、昔できていたことを忘れていたと気付くこともありました。移住したからという問題ではなく、転職したら誰でも感じることでしょうけど。

だから、移住しているというよりも、転職して引っ越したという感じです。そのくらいの感覚で、フラっと引っ越した結果、今でもワクワクし続けています。

移住ではなく、引越しという感覚。地方移住という腰が重くなる言葉ではなく、個人のキャリア形成における選択肢の1つとして「転職×引っ越し」と考えることもできる。

地方には、人財のニーズがある。一歩前へ踏み出すことができれば、地方移住へのチャレンジは、大きなチャンスになりえる。