小さな町の公務員というと、皆さんはどんなイメージをお持ちだろうか。新富町には、外部の意見も取り入れた勉強会を役場内で行なうなど、精力的に活動している公務員がいる。新富町役場の産業振興課 商工観光グループ係長である髙山研二さんもその1人である。
なぜ高山さんはそのような勉強会を企画したのか。髙山さんの目指すものに迫った。
若手が本音を語れるフラットな環境を
—高山さんは、役場内で面白い勉強会を開いていると伺いました。詳しく教えていただけますか?
髙山:平成30年6月から、45歳以下の役場スタッフ有志を募って「NINAITE(担い手)塾」というものを始めました。ふだん、職場内でもあまり話したことがない若いメンバーが集まることで、いろいろな情報を共有できたりするのではと思ったのがきっかけです。
—髙山さんが発起人になって始めたのですか?
髙山:実は、役場から出向して現在はこゆ財団の執行理事をしている岡本(啓二)さんが、財団設立前に「係長会」というものを立ち上げたのが始まりです。当時も係長クラスの若いメンバーを集めて、同じようなことをしていました。
しかし、岡本さんが出向してからは自然と回数が減り、開催されることもなくなりました。
課長からの依頼もあり、私がそれを引き受けて再開することにしたのです。
※高山さんらが企画した「NINAITE塾」。ふだん交わる機会の少ない役場スタッフが顔を揃えました。
自分自身のモチベーションが原因?
—再開するにあたって苦労したことなどありますか?
髙山:まずはメンバーが集まらなかったこと。私自身もそうだったのですが、勉強会と聞くと少し面倒な気がしていて。20名ほどのスタッフに声をかけましたが、1人だと何をするでも身動きが取りづらく、苦労しました。
でも、自分自身も変わりたいと思っているので、活動を続けています。現在までに2回開催しています
—自分自身を変えたいと思ったきっかけは何ですか?
髙山:こゆ財団で開催された「コクリ!プロジェクト」に参加したことです。
正直、このプロジェクトへの参加も、「何で自分が??」と思っていて、乗り気ではありませんでした。
でも、あの時行かなかったら今の自分はないと思います。それくらい、自分にとって大きな経験でした。
もっと自分をさらけ出してよいということ
—特に印象に残っていることは何ですか?
髙山:外の人とのふれあいです。それまでの自分は、「どうせおれなんて」というネガティブな部分があり、自分の意見が言えずにいました。
だけど、「10年後の自分」をテーマにしたワークショップをしている中で、関東から来たメンバーの皆さんがドンドン自分の意見をいうのです。
「スゲーなー」と楽観視していたら、周囲から「君ももっと意見いっていいんだよ!」と背中を押され、少しずつ自分の意見を言えるようになりました。
3日間開催されたプロジェクトの最終日には、チーム間で仲良くなったこともあり、ドンドン自分の意見が言えるようになりましたし、自分が想像していた以上に、周囲の人それぞれが真剣にいろんなことを考えていたり、悩みを持っていたりと言うことに気付いたのです。
「自分の悩みなんて大したことないな」と思えたことで、「自分も何かやってみなきゃ!」と思えるようになりました。
※2019年7月に開催した「コクリ!プロジェクト in 新富町」。日本を代表するリーダーの方々が30名以上集まり、新富町民といっしょに未来を描くワークショップを行いました。
同じ志を持った仲間と共に歩んでいきたい
—それから高山さんのアクションが始まったわけですね?
髙山:はい。まずはNINAITE塾のメンバーを集めて、町長と意見交換会をしました。これまで、町の職員と町長が直接意見交換をする機会はほとんどありませんでした。
町長の考えや、若い職員の考えなど頻繁に意見が飛び交い、参加したメンバーも「参加して本当によかった」「貴重な体験ができた」と、とても喜んでくれました。
—今後、NINAITE塾をどのように発展させていきたいですか?
髙山:まずは、一緒に歩んでくれる仲間が欲しいですね。
参加してくれているメンバーは趣旨を理解してくれているのですが、まだ参加していないメンバーにはなかなか周知できていなくて。
—そのような課題を解決するためにはどうしたらよいと思いますか?
高山:町には地域おこし協力隊の制度もあります。自分も地域課題を解決して魅力を発信したいとか、何か挑戦しようとしている人をサポートしたいなどと思っている人に活用してもらい、自分と一緒に歩いてくれる人が来てくれるととても心強いです。
こゆ財団の高橋(邦男)さんからも、役場で会うたびに「NINAITE塾、次はいつやるんですか?」と気にかけてくれます。周りの情報を自ら率先してキャッチし、いろんな方の意見を参考にしながら少しずつでも進めるよう頑張ろうと思います。
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公務員というと何か堅苦しさを連想する人もいるかもしれない。
でも、それは自分がどうありたいか、どうしたいかだけの問題。高山さんのように、自らチャンスを手にし、活動を始めている公務員もいっぱいいる。
町のことを思うに肩書きや立場は関係ない。できることから一歩ずつ。その一歩一歩が、町の新しいかたちをつくっていくことを高山さんは教えてくれる。