活動レポート

活動レポート

2021年6月24日、宮崎県新富町の富田中学校にて、1•2年生を対象にした講演会が開かれました。「LGBTQ+ 自分らしく生きること」と題して登壇したのは、順天堂大学スポーツ健康科学部助教の野口亜弥さん。町内の他2校へもオンラインで配信しながら、多様性を認め合うことの大切さを学びました。

社会課題に対するスポーツの役割を考える
講師・野口亜弥さん

3歳〜25歳までサッカーを続けた野口さん。大学卒業、米国留学の後スウェーデンでプロサッカー選手として活躍した時期もあり、現在は教員として大学に籍を置きつつ国内外でスポーツを通した社会活動に取り組んでいます。

なでしこジャパンの活躍もあり、今でこそ女子サッカーが認知された世の中ですが、当時の日本は“サッカー=男の子のスポーツ”という認識。男の子のなかに女の子1人という状況も珍しくなかったとか。LGBTQ+やジェンダー問題も社会課題として取り上げられるようになった昨今、野口さんはスポーツを通じて、教育・研修・人材育成・国際協力事業等を行い、より良い社会の発展に貢献することを目的に一般社団法人S.C.P JAPANを2020年5月に設立。共同代表の一人でもあります。また、多様性に関する様々なイベントやコンテンツの提供を目指すプロジェクト『プライドハウス東京』の理事としても活動しています。
一般社団法人S.C.P JAPAN 設立の思い(note)

LGBTQ当事者は全体の約8%

総合学習の時間に「LGBTQ+」や「レインボーフラッグ」を学ぶ機会があった中学生。とは言え、具体的な意味や当事者の思いについて、理解していると言える人はまだまだ少ないのではないでしょうか。プロジェクターを使い、LGBTQ+の意味から丁寧に説明されました。

「LGBTQ+」は、L…Lasbian(レズビアン)、G…Gay(ゲイ)など、個人の性的指向や性自認を意味する英語の頭文字をとってつくられた言葉。セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)を表しますが、LGBTQ+は全体の約8%ほどもいるのだとか。
「血液型で言えば、AB型と同じ割合なんです」
自分の周りにいない、会ったことがないと思っていても、当事者は案外自分の近くにいて、「言えないでいる」だけかもしれません。
気持ちを言えずにいる、まだ自分でも明確に気づいていない8%のLGBTQ+当事者がいることを意識して、
「当事者の気持ちに配慮して、言葉を考えながら行動してほしい」
と野口さんは話します。

allyになろう。性別よりその「人」を見つめよう

LGBTQ+の人たちに寄り添い、誰もが生きやすい社会をつくるにはどうすることが求められるのでしょう。野口さんは「ally(アライ)になること」と言います。
allyとは「盟友、味方、同盟者」という意味。LGBTQ+の当事者ではないけれど、LGBTQ+の生き方を支持し、協働していく人のことを指します。具体的な行動としては、
・代わりに声を上げる
・レインボーの何かを身に着ける
・「男らしさ」「女らしさ」に当てはめない
・異性愛が当たり前であると決めつけない
などで、性の多様性を認め、「あなたらしく、そのままでいいんだよ」というメッセージになります。従来の性の枠で判断するのではなく、その人が「人」としてどうなのかを見ることで、より深く理解し合うことができます。
また野口さんからは、「アウティングしないことも重要」とも。
アウティングとは、LGBTQ+当事者であることを打ち明けられた時、本人の許可なく他の人に言ってしまうこと。偏見ある人たちの何気ない言動によって、その人の居場所がなくなる可能性だってあるのです。

カミングアウトは信頼の証

もし、身近な人からLGBTQ+をカミングアウトされたら、私たちはどういう言葉を返すでしょう。びっくりしてしまうかもしれないけれど、「打ち明けるのはとても勇気がいること。ぜひ受け止めてあげて」と野口さん。今日のこの時間をきっかけに、心の準備をしていてほしいとも話します。
打ち明けてもらえたことは信頼の証。『話してくれてありがとう』とか、『何も変わらないよ』といったことを伝えてあげられると、本人はとても救われるはずです。

ここで、『カミングアウトされた時に返したい言葉』というスポーツ界からのメッセージ動画をみんなで視聴。性の多様性を認め合い、スポーツを通して友情を深めることの素晴らしさを共有することができました。

女子サッカークラブ『ヴィアマテラス宮崎』
新富のホーム戦でプライドマッチを実現

この日、女子サッカークラブ『ヴィアマテラス宮崎』の選手数人も、会場で講演を熱心に傾聴。LGBTQ+の世界的な権利啓発月間である6月最後の日曜日に、LGBTQ+への理解を深めてもらうため、富田浜公園でのホーム戦を「プライドマッチ」として開催することの告知も兼ねて来てくれていたのです。

“女子サッカー選手が「自分らしく生きる」ためにも、クラブとしても理解を深め、様々な取り組みを行っていきたいと思います”(ヴィアマテラス宮崎公式サイトより)

このような取り組みをするサッカークラブが町に存在することは、子どもたちにとって大きな価値であり誇れること。「LGBTQ+の人はAB型と同じくらいいると聞いて驚いた。これからもっと知っていきたい」と生徒代表による感謝の言葉のように、地域全体で多様性への理解を深めていきたいものです。