リクルートキャリアHR統括編集長として、これまで様々なキャリアや地域に関わってこられた藤井薫さん。編集者でもある宮崎県新富町のこゆ財団執行理事・高橋と共に、伝わる編集や文章について対談を行いました。
■開催:2020年10月29日(木)14:00〜15:30 オンライン開催
■対談テーマ:伝わる文章塾。編集歴20年以上の編集者から学ぶ、編集の極意。
■オンライン動画はコチラから
■ゲスト講師:藤井 薫 氏
(リクルートキャリアHR統括編集長/リクルート経営コンピタンス研究所)
<参考記事・サイト>
・8/8 コクリ!新富町ご縁のウエダ本社岡村社長ともご一緒。
・ふるさと副業@西日本新聞
■ナビゲーター:高橋邦男(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 執行理事)
投げつけるばかりになっていませんか?
「情報が人間を熱くする」という当時のCMに一目惚れしてリクルートで働き始めたという藤井さん。伝わる文章を書く上で大切なことは「キャッチャー×キャッチャー」の関係性だといいます。
私たちは「伝えよう」と意気込むと、どうしても一方的に情報を投げつける「ピッチャー×キャッチャー」型の伝え方になりがちです。
しかし、「相手にちゃんと伝わるように」という意識、そしてそれ以前に「相手が何を求めているのか」ということについて洞察しなければ、伝わる文章にはならないと藤井さんは語ります。
あくまでも主役は受け手。「これを読んで、読み手はどう感じるかな」ということに思いを馳せ、さらに、「受け手から自分は何を受け取れるかな」まで考えることが重要だそうです。
このことを、藤井さんは「主客融合」という言葉で再度説明されました。
先述の「主役は受け手」という意識で文章を書き続けると、ピッチャーとキャッチャーだった関係が、最終的に受け取り合う関係の「キャッチャー×キャッチャー」として一体化し、お互いに分かり合えるようなつながりが生まれるとのこと。
この「受け手が主役の伝え方」の練習として、藤井さんが実際に行っているのが「なりきりインタビュー」。例えば、新しい携帯電話の記事を書く前に、自分が携帯になりきって「何のために生まれたんですか?」「おじいちゃんがお孫さんと簡単に楽しくおしゃべりできるように生まれてきました」などとインタビューを行うというものです。
そうすると、面白いことに選ぶ言葉はもちろん、話し方や仕草までやガラリと変わってくるそうです。
「伝わる」文章を書くためのプチテクニック
①感覚が呼び起されるような文章を意識する
『走れメロス』などのように、文章を読むと風景が立ち上がり、自分の身体的な感覚まで呼び起されるような文章であるかを考えること。
例えば、食べ物についての文章を書くとき、ただ「おいしい」ではなく「どう」おいしいのか、どんな食感なのかなどという部分を描写することが必要です。
②口に出してみる
有名な漫談家・綾小路きみまろさんが、リハーサル中に「渋谷・六本木・赤坂」より「渋谷・赤坂・六本木」の方がリズムがいいことにふと気づいて修正したという逸話があります。このように、口に出してみて初めて分かる文章のリズムにも注意を向けることが重要です。
日本は略称、特に4文字の言葉が流行りやすい傾向にあります。15秒のCMの見出しや、ラジオ番組の略称など、身の回りの言葉のリズムをインプットしてみましょう。
地域の面白さはどうやって伝わるんだろう?
地方創生事業の活発化などに伴い、「地域のいいところを発信する」ということが重要視されつつあります。
藤井さん曰く、地域の情報を集める極意は、「徹底してローカルに振り切ること」。
徳島県で編集者としてスタートしたこゆ財団・高橋も、「徳島にやってきて、最初に言われたことは『徳島人になれ』でしたね。まずは徳島の言葉をしゃべるところからだ言われました(笑)」と自身の経歴を振り返りました。
地域にはそれぞれ「新しくできたもの」と「昔からあるもの」が存在し、魅力発信の際にはそのどちらかに偏りがちです。
しかし、藤井さんが言うには「どちらも手段」。結果的にその地域で一番何を大事にしたいのかという部分に焦点を当てることで、地域の魅力をうまく伝えることができるのだとか。
「誰に・何を・どのように」伝えたいのか。この3点を普段から少し意識するだけでアンテナの立ち方も変わってくると藤井さん。
「伝わる文章」というとどうしても語彙力の豊富さなどに目が行きがちですが、普段から実践できる考え方が重要なのですね。