今回のゲストは、ソーシャルデザインの専門家であり、デザイン事務所「NOSIGNER株式会社」の代表を務める太刀川英輔さん。太刀川さんはすでに、お酒・文房具といったものづくりや洋菓子店や老舗のお茶屋さん、球団のブランディング、また自治体の政策づくりや今注目のコロナウィルス対策に至るまで、多種多様な地域ブランディングを手掛けています。
ご自身が手掛ける「地域ブランディング」のイロハを伺いました。
■開催:2020年10月26日(月)20:30〜21:30 オンライン開催
■対談テーマ:地域ブランディング
■オンライン動画はコチラから
■ゲスト:太刀川英輔氏(NOSIGNER 代表)
■モデレーター:齋藤潤一(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 代表理事)
「地域らしさ」がブランディングの大前提
太刀川さんがブランディングを手掛ける上で大事にしているデザインルールは2つ。
①世の中で一番かっこいいものを作ること。
②それが一番かっこいいことを証明すること。
プロジェクトが誕生したことで地域がどうなるかという関係性に注目し、地域と良い関係が築ける・未来が良い方向に進むものだけに関わると決めているそうです。
前例のないケースをデザインとともに作ることで他の人が取り組みやすくしたり、社会を刺激・触発するために企業や行政とタッグを組み、新しくチャレンジングなプロジェクトを提案したりしながら、見えてきたのは「デザインや創造的な仕事をするのは、なにも創造的な職種に就いている人だけではない」ということ。
「プロジェクトに適したものを作って絶対に売る」という気持ちを大事にしながら、いかに「地域らしさ」を出すかが地域ブランディングの大前提であると考えるようになったそうです。
「ブランディングする」ということ
人口370万人を超える日本最大の政令指定都市・横浜市が誇る横浜DeNAベイスターズ。そのブランディングに2013年から関わってきた太刀川さんは、その一環として2017年に「The Bays」というコワーキングスペースを作りました。
そこには球団の人たちだけではなく、地域の商店街の人や鉄道・不動産・他企業・まちづくり協議会の人たちが集まり、「YOXO(よくぞ)」というイノベーション政策を進めています。
こういった地域ブランディングで大切なのは、地元からネーミングを生み出すなど「いかに地元を生かすか」「そこに住む人たちの思いをどう具現化していくか」を考えること。そこから発想が広がるといいます。
さらにポテンシャルを最大化するため、その中に作り手の思い・使い手の思いも同時に乗せていくことが大切だと熱弁されました。
これまでになかった日本酒「MIKADO LEMON」
次は、こちらも太刀川さんがブランディングに携わったスパークリング日本酒「MIKADO LEMON」について。
これは広島の酒蔵が「酒文化を未来に残したい」「日本酒の楽しみ方を作りたい」という思いからプロジェクトがスタート。日本酒を地元産のレモン果汁と一緒に発酵させることで、美味しく安価なスパークリング日本酒作りに成功しました。
「MIKADO LEMON」という商品名は、先述の「地元からネーミングを考える」という思考のもと、レモンの産地「三角(みかど)島」から取られています。
熟成が難しいという壁がありながら、プロジェクトチームはなぜあえて「日本酒」で「スパークリング」であることにチャレンジしたのでしょうか。
それは、「日本酒で一つの市場を作りたい」という思いがあったから。さらに「シャンパンに代わるような乾杯のお酒をつくりたい」という熱い気持ちが「スパークリング」という発想を生んだのです。
さらに、パッケージに関しても吟味。珍しい「レモン味」ということが一目で分かるよう、ラベルにはレモンの凹凸をスキャンしたシールをあしらいました。
ここで、最も重要視すべきことは「率直である」ということ。「見るからにレモン」なラベルと「どう見てもシャンパンボトル」な形のボトルを組み合わせることで、どんなお酒かがすぐに伝わるようになるのです。
ブランディングはチームタッグ
「地域ブランディングで悩むのは世界中どこでも同じ」と語る太刀川さん。自分の地域には何もないように思えても、チャンスは無限に埋もれています。
そのチャンスを目に見える形にするため、デザイナーなど外からのアプローチ(風)と地元の人たち(土)が役割分担をすることで、地域ブランディングは形になっていくのです。
90分のオンライントークを通して、太刀川さんからたくさんのメッセージを受け取ることができました。