活動レポート

活動レポート

2024年10月1日、豊かな自然と食のまち・宮崎県新富町を舞台に開催された「WELLNESS CAMP(ウェルネスキャンプ)」。ウェルネスとは?ウェルビーイングとは?そんな自己探求の旅で、参加者たちが見つけ、手にしたものとは。

旅の目的は「自分自身のウェルネス探求」

10月とはいえ残暑真っ只中の朝、宮崎空港のバス乗り場に1人また1人と集まる人々。なかには電話やオンラインを繋ぎながらの人もいて、多種多様なビジネスパーソンが集まっているようです。

ここからバスに乗り、向かう先は宮崎県新富町。

この日開催されたのは、株式会社ウェルネスエイト(Wellness8)の小島有史さんが企画・運営する経営者/ビジネスパーソン向けの招待制イベント「WELLNESS CAMP(ウェルネスキャンプ)」。全国各地から20名の参加者が集まり、前日は前夜祭も開催されました。

「動きたくなる毎日を」をテーマに創業したウェルネスエイトでは、

・自社の経営にウェルネス/ウェルビーイングを取り入れたい
・仕事のパフォーマンスに繋がる自分のウェルビーイングを高めたい

そんな経営者やビジネスパーソンに向けた“WELLNESS CAMP”を企画・運営しています。

2023年6月に第1回を湘南江ノ島で、2024年6月に第2回を熱海網代で実施。続く3回目が今回の新富町となります。熱海で参加した地域商社こゆ財団代表の齋藤潤一さんが、食を介した地域活性化を目的として本イベントを招聘し、実現しました。
今回のWELLNESS CAMPには、ウェルビーイング有識者である島田由香さん(株式会社YeeY 共同創業者/代表取締役)が特別ゲストとして参加。島田さんは齋藤さんとの繋がりで、新富町とは深いご縁があります。

「ウェルネスとは〝豊かな生き方〟を指しますが、人によって、描く未来によって、日々の挑戦の強度によって、関わる人や社会の輪の大きさによって、など前提の変化によって大きく変わるもの。大自然の中で〝自分にとってのウェルネスが見つかるきっかけの1日〟をテーマに、探求し繋がりを生み出す、究極の生き方探究イベントです」(小島さん)

「ウェルネス」と「ウェルビーイング」は近しい概念ですが、小島さんのnoteによると

ウェルビーイング:個人が肉体的、精神的、社会的に満たされた「状態」
ウェルネス:個人が肉体的、精神的、社会的に満たされる「実践」

と表現されています。

新富町は、野菜やうなぎ、肉など、食が豊かなまち。大自然のなか、エネルギーあふれる“食”を通して、参加者たちはどんなウェルネス探求の旅を体験するのでしょうか。

本日のフィールド「新富町」の概要を学ぶ

まずは新富町のこゆ財団で、新富町の特徴をインプットします。

豊かな自然と恵まれた気候を活かした野菜や肉、うなぎの産地。こゆ財団がブランディングを手がけた一粒1,000円の「新富ライチ」も町の特産品として知られるようになりました。近年はサッカーを中心としたまちづくりが注目されています。地域おこし協力隊の制度を活用し、都市部からの移住者を少しずつ増やしてきているまちでもあります。

うなぎ養殖の現場で食を体感。生命の循環に触れる

いよいよ生産の現場へ。食べ物となる生命がどのような繋がりのなかで育まれ、人がエネルギーとしていただくことができるのか。都市部で生活する日々ではなかなかできない、産地ゆえの体験です。

会場は、新富町内で40年以上続くうなぎ養殖業「中村養鰻場」。青空のもと、生産者や職人と触れ合いながら、取れたて、さばきたて、焼きたてのうなぎをいただきました。

▲敷地内にテントを張り、テーブル席が準備されていました

うなぎの生命力を引き出す「生産者」。

その味を引き立てた“焼き”に徹する「職人」。

生産現場で生命の循環に触れ、そのエネルギーをいただく瞬間は、本イベントの重要なコンテンツです。

▲中村養鰻場の代表・中村哲郎さん

うなぎの養殖について語ってくださったのは、同社の代表を務める中村哲郎さん。うなぎは成長が早く結果が見えやすいので、育て方をコントロールしながら養殖に取り組めるおもしろさがあるそうです。

「うなぎの成長とともに、自分も会社も従業員も成長していけたら」と、環境の良い新富の地で挑戦を続けていらっしゃいます。

中村さんにその腕を買われ、会場でうなぎを焼くのは「うなぎ居酒屋 西口商店(宮崎市)」を営む西口 真さん。和食の調理人から独立・開業したばかりだそう。

「うなぎは命を絶ってから腐敗が早い。火の入れ方が甘いと危険なので、熱を込める焼きの作業が大事です」(西口さん)

炭火の上でうなぎを焼く様子と、同時に放たれる芳ばしい香り。力強い職人技に、参加者はいつのまにか釘付けになっていました。次々と焼き上がるうなぎに箸が止まりません。

▲蒲焼きに加えて、しゃぶしゃぶで食べる白焼きも登場

食事の後は、中村さん直々に解説していただく養殖現場見学です。実家の養殖業に従事し15年たった頃にようやく本質がわかってきた、という中村さんによると「うなぎの養殖は母親業」。声を発しないうなぎの変化に気を配り、お世話をする毎日。うなぎは犬の数千倍もすぐれた嗅覚をもち、中村さんが近づくと遠くからでも気づくのだそう。「ここにいる間は幸せに」と、愛情を込めてうなぎを育てているそうです。

熱狂的なまでにうなぎを愛し、追究し、さまざまなデータを取りながら実践や改善に取り組む中村さん。仕事というよりもライフワークのように好きなことに没頭するさまは、まさにウェルネスの体現者です。

日常を過ごすだけでは得られない、自然のパワーや職人の熱い思いに触れたみなさん。自身のウェルネス探求のヒントが得られたのではないでしょうか。

自身と対話する時間。「自分のウェルネスとは?」

次は、新富町総合交流センターきらり大会議室へ移動。日常を離れ、自然のなかで心も体も解放した状態で、本日の本題「自分にとってのウェルネス/ウェルビーイング」を探求し、言語化するワークショップの時間です。

ここまで場づくりに徹底してきた小島さんが、ようやく本題を語り始めます。

小島さんが22歳から身を置く飲食業界は、組織づくりが難しいと言われ続けてきた現場。経営者として、コロナ禍を含めさまざまな経験を通して「ウェルネス」の必要性を強く感じるようになったのだとか。現在、食ビジネスを展開しながら、ウェルネス追究による最高の組織づくり、より良い社会づくりに挑戦していらっしゃいます。

「ウェルネスは生きていることを実感できる“実践”、ウェルビーイングは生きていることを実感し、心と体が満たされた“状態”。みなさんも、それぞれのビジネスを通じてウェルビーイングを表現してほしいと思います」(小島さん)

2年ほど前、体調に異変を感じはじめた島田さん。それは、仕事の「量」や「時間」、役割の大きさからくるプレッシャーが問題ではなく、本当にやりたいこととの「乖離」が原因でした。

「明日死ぬかもしれないのに、やりたいこと以外に時間とエネルギーを費やすのは嫌だと思って、雇われない働き方にシフトしました」

第一次産業に深く関わり多くの仲間が生まれた和歌山県みなべ町に住民票を移動。東京中心の生活を手放し、1年の半分はみなべ町で過ごすことでウェルビーイングを高めていらっしゃるそうです。

「ウェルビーイングは体感しないと語れないもの。ウェルビーイングを体感し、語れる人が組織に1人でもいることが重要です」(島田さん)

おふたりを繋いだ齋藤さんから、こんな提案が。

「白木さん、せっかくだから島田さんに今の想いを聞いてもらったらどうですか?」

そうして、島田さんと白木智洋さんの公開セッションが始まりました。

白木さんは小島さんと一緒にWELLNESS CAMPを立ち上げた方。普段は不動産デベロッパーの会社員とまちづくり会社の経営という二刀流で活躍していらっしゃいます。

まずは白木さんが心の内を開示し、参加者たちは静かに耳を傾けます。そして、ウェルビーイングの観点で、島田さんが白木さんの想いを解きほぐしていきます。

「今の想いを、ぜひ能動的な言葉に変えて発してみてください。自分の声を脳は聴いていますから」

島田さんも、今の働き方・あり方に変わる前の体験談を話しながら、ご自身のウェルビーイングについて語ってくださいました。

そんな対話から、すでに自分の中の欲求に気づいた様子の白木さん。いつの間にか会場の雰囲気は和らぎ、温かなものが醸成されていました。

ペアでの対話から、自身のウェルビーイングを言語化

白木さんと島田さんのセッションの後は、参加者同士がペアになり探求の旅へ。

「自分自身のウェルビーイングを語れる状態になって、帰ってきてくださいね」

小島さんの声に背中を押され、思い思いに会場の外に出かけていきました。

全員が会場に戻ってきたところで、円になり1人ひとりが自分の中のウェルネス/ウェルビーイングに対する気づきを発表しました。

自分はどういう時に“快”を感じるのか。

どういう状態だと心と体は満たされるのか。

そのために必要なことは?

まわりとの関係性は?

日頃は多くの時間をビジネスの思考に費やしているみなさん。

日常を離れ自分自身のウェルビーイングを深く考える空間に身を置くことで、自分の内面と対話する貴重な時間となりました。他の人の想いに触れることも、自身の想いを解像度高く見つめ直すことにつながったのかもしれません。

ポジティブもネガティブも、両方の気持ちを受け止めた上で自分の欲求を見つけ出すプロセスは、思いのほか心の体力を要します。時間をかけ、エネルギーを費やして見つけたウェルビーイングを、それぞれが自分の言葉で語っていました。

生産現場を感じる、地どれの肉や野菜。1日を過ごした仲間たちと乾杯

一同は宮崎市にあるレストラン「THE TERRACE」へ。こちらは自社牧場直送の黒毛和牛が味わえる店。経産牛(子牛を産んだことのある雌牛)を牧場で6ヶ月かけて飼い直したブランド牛「霧島和牛」を、県産の薪で焼き上げるのが特徴です。

牧場のこと、食材に関するバックグラウンドを直接学んだ後、乾杯。

1日を振り返りながら、肉料理にサラダ、デザートと多彩なビュッフェメニューを存分に味わいました。

肩書きにとらわれない、人として繋がるもの同士で自然に触れ、生命の循環を感じながら過ごした探求の1日。偶然にもここで集い、苦楽を共にした仲間たちとの食事や会話は、楽しさ・おいしさもひとしおだったことでしょう。

次回の開催日程&場所が早くも決定!

今回のWELLNESS CAMP in 宮崎県新富町が終わるタイミングで、早くも次の開催が決定!島田さんの活動エリアである和歌山県みなべ町をフィールドに、第4回を2025年2月25日〜26日で実施することに。新たなご縁が、ここからまた生まれました。

今回、株式会社ウェルネスエイト(Wellness8)の小島有史さんが企画・運営する経営者/ビジネスパーソン向けの招待制イベント「WELLNESS CAMP(ウェルネスキャンプ)」を、新富町をフィールドに開催いただきました。

(取材・執筆:矢野由里)
共催:LIFEBASE・こゆ財団
協力:一般社団法人シラタマワーク


豊かな食と農業が盛んな新富町にて、生産者の協力もいただき実現した「食育ウェルビーイングツアー」。今後も新富町をフィールドに研修・体験ツアー企画をご希望の方は、お気軽にこゆ財団問い合わせよりご連絡ください。