地域おこし協力隊

地域おこし協力隊

地域おこし協力隊の制度を利用し、10年100社1000人の雇用を目指す宮崎県新富町の地域商社「こゆ財団」。

新富町は、財団の取り組みにより、数多くの自治体からの視察や起業家育成塾、こゆ朝市などのイベントにより、関係人口が増え続けている町になっている。

では、関係人口を増やすために必要なことは何なのか。
こゆ財団の事務局長で採用担当の高橋邦男さんに話を伺った。

ソトコト編集長との出会いが全ての始まり

—関係人口の重要性を感じるきっかけになった実体験などありますか?

高橋:1つ目は、3年ほど前に東京の国際フォーラムで開催されていた、移住イベントをのぞいた時の違和感。
もちろん出展されている自治体の方々は一生懸命来場者にアピールをしていたのだと思いますが、

他の地域との違いをアピールしているはずなのに、なぜかみんな法被を着て、幟を立て、自然が豊かでおいしい職があって…などと、ほとんどどの地域にも当てはまる様な言葉を並べていました。

人が移住するとか、地域に関心をもつきっかけって、そんなことではないんちゃうかなと。

その光景にすごく違和感を感じたのをはっきりと覚えています。

2つ目はそのあとのできごとで、宮崎県の美郷町にある、渡川(どがわ)という地区での体験。2年前くらいです。

渡川の原木椎茸オーナー制度を知る機会があり、植樹や収穫の体験もできるということで、家族3人で渡川に行きました。

ぼくの息子は椎茸が苦手で、もしかしたら体験を通して好きになってくれるんじゃないかと思ったんですね。

何度か通ううちに息子は椎茸をおいしく食べるようになり、妻も「渡川マンマ」と呼ばれる、現地の奥さまたちが作るお弁当の大ファンになりました。

なにより、家族全員が自宅でもなく故郷でもない渡川に感情移入をしている事実。
SNSで「椎茸が鹿にやられた」と聞くと、家族全員がざわざわしますし
冬の雪深い景色をSNSで眺めているとまた遊びにいきたくなる。

決して移住するわけではないのですが、間違いなく特別な場所になっています。

移住イベントでの違和感の一方で、渡川とのこんな関わり方って素敵だなという実感。
ぼくの中にはその2つの感覚が同居していました。

そして昨年8月、ソトコト編集長の指出さんから「関係人口」という言葉を聞いた時に
「これか!」と感じ、これまで引っかかっていたものが全てストンと落ちましたね。

新富町で目にした多様性

—関係人口という言葉が体現できたと感じた瞬間はいつですか?

高橋:まずは「月刊ソトコト」の表紙として取り上げてもらえたこと。全国から本当にたくさんの反響をいただきました。一方、町内のことでいうと、昨年12月に開催した「こゆドリンクス」というイベントですね。

その会場で、すごく多様性を感じたのです。

狭い部屋いっぱいに30人が集まり、東京からのゲストと、こゆ財団代表の齋藤が「まちの場づくり」についてトークをしました。
その時の参加者は、新富町で商売を営む人や、視察に来られていた他の自治体の方、起業家育成塾の受講生、財団のメンバーなど、本当に多様な人が集まってくれたんです。今では毎月開催している「こゆ朝市」がそういう場になっていますが、「関係人口」が初めて形となって見えたのはこのときでしたね。

こゆ財団は人と人をつなぐ「関係案内所」

—関係人口におけるこゆ財団の位置付けは何だと思いますか?

高橋:指出さんから言われた「関係案内所」だと思います。

昨年8月、指出さんから「こゆ財団さんは、このまちの関係案内所になっていますね」と言われたことで、これまでやってきたことを初めて言葉にしていただいて、なるほど!と感じました。

なんか指出さんの話ばっかり。
指出さんが大好きなんですね(笑)

関係人口増加のキーワードは「委ねる」

—関係人口を増やすために必要なことは何だと思いますか?

高橋:「委ねる」ことだと思います。
最近強く感じることですが、いろいろな人に「委ねる」ことができる余白があるかどうかが重要だと思いますね。

何か地域のよさを知ってほしいと思うとき、「これがよくて、あれもよくて」と押し売りになりがちなところもあると思うんですけど、
よそから来た人の感じるよさって、それぞれ違いますよね。ぼく自身も隣町から来ているので、地元の人と見方は違います。

その見方の違いを、そのまま受け容れていく。
まちをキャンパスに見立てて、来る人に委ねて、自由に絵を描いてもらうイメージです。

一方で、自由に委ね過ぎてもかえって不安になりますので
まちの大枠は、こゆ財団という中間支援団体がお伝えします。
まちや人、暮らし方、働き方について、ほどよい情報を提供し、関係人口をサポートできるのがこゆ財団の強みです。
全国的にも珍しい団体なので、その強みを活かしていきたいです。

—今後、どのように関係人口を築いていきたいですか?

高橋:ありがたいことに、これまで全国からたくさんのゲストに来ていただくことができました。
今後はそこで生まれた関係が双方により実りのあるものになるよう、
このまちをフィールドとした人材育成や企業研修など、より具体的なプログラムにつなげていきたいと思います。

内閣総理大臣からも注目されるこゆ財団。
その背景には、多くの関係人口の存在があった。

新富町と関わりも持つ人々が、新富町の良さを日本全国に発信してくれ、さらなる関係人口増加に繋がる。

宮崎県の小さなまち新富町のワクワクが日本全国を輝かせる。