新富町で始まる「表現とまちづくり」の挑戦、MIRISEとは。プロデューサー藤澤さしみの想いに迫る【藤澤さしみさん/MIRISE】 - 地域商社こゆ財団

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新富町で始まる「表現とまちづくり」の挑戦、MIRISEとは。プロデューサー藤澤さしみの想いに迫る【藤澤さしみさん/MIRISE】

新富町で始まる「表現とまちづくり」の挑戦、MIRISEとは。プロデューサー藤澤さしみの想いに迫る【藤澤さしみさん/MIRISE】

「この街、ちょっとおかしいですよね。」

そう笑いながら話すのは、MIRISEプロジェクトのプロデューサー・藤澤さしみさん。
5年前、初めて新富町を訪れたときの印象を、こう振り返ります。

「町民が全員、演者に見えたんですよ。
 普通じゃない。東京では感じたことのない“表現したい空気”がありました。」

その違和感が、今回の挑戦の始まりでした。


話を聞くうちに見えてきたのは、
「表現」と「まちづくり」と「人の人生」が、ひとつに繋がっているという感覚です。
これから始まるMIRISEで、さしみさんが何をつくろうとしているのか。
その輪郭を、ひとつずつ紐解いていきます。

表現とビジネス、そのあいだで見えてきたもの

さしみさんは、大阪出身。
高校を辞め、芸人の道へ進みました。
その後、大学でメディアや舞台制作を学びながら落語にも取り組み、
表現する側と、つくる側の両方を経験していきます。

新卒で入社したのは、クリエイターと企業をつなぐエージェント会社。
舞台や劇団、映像クリエイターと企業を結びつける仕事に従事し、
企業の周年事業を演劇としてプロデュースするなど、
“表現をビジネスとして成立させる”現場を数多く手がけてきました。

劇団や企業、多くの現場に関わる中で見えてきたのは、
ひとつの“構造的な課題”です。

どれだけ時間と情熱を注いでも、表現だけでは生活が成り立たない。
本気で取り組む人ほど、別の仕事で生きていかざる得ない現実。

「魂を燃やせる仕事と
お金を生む仕事は、分けて考えたほうがいい」企業のニーズと表現の力を結び、収益を生む。
その上で、本気で魂を燃やせる作品に向き合う。

ビジネスとアートを対立させるのではなく、
両方が機能する構造をつくること、
それがさしみさんのたどり着いたひとつの答えでした。

「そこに夢があったから」

なぜ新富町だったのか。

その問いに対して、さしみさんはこう答えます。

「そこに夢があったから。」今年度から新富町文化会館ルピナスみらい劇場を拠点に始まった「MIRISE」。
この名前には、未来(MIRAI)と融合(FUSION)という意味が込められています。

人と人、町と外、表現とビジネス。
異なるもの同士が交わり、新しい価値を生み出していく。
演劇や芸術だけでなく、農業や商品開発といった分野も巻き込みながら、
人・企業・文化が融合することで「稼ぐ劇場」を実現していくプロジェクトです。

たとえば、農家とクリエイターが協働して商品を生み出したり、
町民が参加する舞台を通じて、新しい関係性が立ち上がっていく。それは単なる文化事業ではなく、
つながりを生み続けながら、町そのものを表現していく取り組みです。
そして同時に、関わる人や企業がきちんと収益を得られる仕組みをつくること。

この実現こそがさしみさんの想いであり、
あの『そこに夢があったから。』という言葉に繋がったのだと確信しました。

プロデューサーとして目指すもの

MIRISEの軸にあるのは
『つくる つながる まちづくり』
というコンセプトです。

「単に作品を生み出すことではなく、
人と人の間にある距離や立場を越え、繋がること。
その先に「ありがとう」が生まれたとき、それがひとつの表現になるんです」

何かを形にすることだけが「つくる」ではありません。
誰かと関係をつくることも、町の中でその関係が循環していくことも、
全てが「つくる」という営みです。

この町を舞台に、多くのありがとうを生み出していく。
そんな意思が、言葉の端々から伝わってきます。

誰もが立てる舞台へ

これまで落語家としても数多くの舞台に立ってきたさしみさんは、こう語ります。

「舞台はみんなが立つものです」

農家も、飲食店の人も、会社員も、町長も、子どもたちも
誰もが関わり、表現できる場をつくる。

特別な誰かだけのものではなく、
関わる一人ひとりが、自分の中にあるものを持ち寄り、交わること。

それが、MIRISEが目指す目標であり、さしみさんのつくる場所です。

この町から始まるもの

人口およそ1万5000人の宮崎県新富町。
この小さな町で、MIRISEの挑戦はすでに動き始めています。

これまでさしみさんが積み重ねてきた経験と知恵を糧に、
多くの人を巻き込みながら、
「つくる」で壁を越え、「ありがとう」が循環する仕組みを生み出していく。

この町から、どんな表現と関係が生まれていくのか。
MIRISEの挑戦は、まだ始まったばかりです。

取材・執筆:福丸智子