ふるさと納税の金額を2017年の4億円から9億円まで倍以上に伸ばしている地域商社「一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(略称:こゆ財団)」。
こゆ財団は、その資金を起業家育成に投資することで、さらに面白い人材を巻き込み、全国誌にも面白い町として紹介されている。
では、具体的に4億円から9億円までどのように伸ばしたのか。さらには、その資金をどう活用することで、どのような成果が出たのか事務局長の高橋邦男さんに話を伺った。
ふるさと納税担当クルーの対応が“神対応”
—ふるさと納税の競争が激化する中で4億円から9億円まで伸びた理由について教えてください。
言えるのは、こゆ財団のメンバー達が「強い地域経済を作る」というミッションのもと、町経営にビジネスの仕組みを持ち込み、PDCAを繰り返し、常に細かい改善を繰り返して達成したということに尽きると思います。
さらには、スタッフの対応が神対応ということがリピーターの増える要因の1つだと思うのです。
とにかく1人1人のお客様と真摯に向き合い、お客様の立場にたったカスタマーサポートを、僕の指示ではなく彼らが自発的に動いているということが非常に大きな要因になっている。
地域ビジネスとして、当たり前のことを当たり前に
—ふるさと納税で売上が躍進した秘訣はなんですか?
他の自治体の方も視察に来るのですが、その中で、「何をしているのですか?」「どうしたら良いのですか?」という質問をよく受けます。私たちはビジネスとして当たり前のことを当たり前にしているだけなのです。
特にデータを大切にしていて、新商品を出したらどれくらい売れているか検証する。検証をして売れている商品は上に出し、売れていない商品はページを作り直すなどの改善をします。
逆に言うと、当たり前のことができていない自治体が多いからウチが残っているということも言えますね。
人に投資することで生まれる循環
—ふるさと納税の使い道として、町から委託を受けている売り上げの6%の使い道を教えてください。
一番は、人件費や販管費が必要経費として占めますが、その中で残ったわずかな利益を起業家育成や、新商品の開発などに投資しています。
起業家育成の例でいうと、児湯タートル大学という起業家育成塾をやっていて、そこから地元の農家さん達が成長したり、さらに美味しい生産物を作ったりしてリピーターが増えるという良い循環が生まれています。
ヒット商品は現場にころがっている
こゆ財団がヒット商品を次から次に開発していく秘訣はなんですか?
町全体がコンパクトなので、企画チームとふるさと納税チームが同じフィールドで動くことができます。それにより、他の自治体よりもかなり早いスピードで商品の企画・開発・リリース・検証というものができるのではないかと思います。
また、ウチのスタッフは、どんどん町に出て情報を集めている。良い商品というのは季節や現場によっても変わるし、農家さんのちょっとした一言から生まれることが大いにあるのです。
その中で一番のヒット商品は、ライチの皮を使った「ライチ茶」。ウチのスタッフが考えてくれたのですが、ふるさと納税でも売れるし、新宿みやざき館「KONNE(こんね)」でも完売するほどの人気商品です。
この商品も、ライチの皮を捨てるのは勿体無いという農家さんの声から生まれた商品なのです。
資金を消費するのではなく投資に使う

ふるさと納税サイトのふるさとチョイスのスクリーンショット
ふるさと納税で集めたお金を、どのように活用すれば良いのか分からないという自治体の方もいますが、これについてはどのようにお考えですか?
以前も話しましたが、新富町では儲かる農業というイベントをしています。これは、農家さんから得た返礼品などで売り上げを上げて、その売り上げを農家さんが勉強する機会にあてるというものです。
そうすることで、さらに売り上げが上がり、農家さんが儲かる。農業が儲かると新規就農者が増え、市場競争が生まれ、もっと美味しいものを作ろうという生のスパイラルが生まれると思うのです。
他の自治体がどう使っているかは分かりませんが、うやむやになって消えて行くのであれば、それは投資ではなく“消費”です。ふるさと納税の資金をしっかり投資で活かしているというのが、僕たちの一番の強みじゃないでしょうか。
地域から集めた素材を活かして生まれたヒット商品。そこから生まれた資金をもとに、さらなるヒット商品が生まれるフィールドを作る新富町こゆ財団。人に投資することが確実にヒットしているこゆ財団は、これからも町全体を巻き込んだチャレンジを続ける。