宮崎県新富町では、現在JFLに所属するサッカーチーム『テゲバジャーロ宮崎』のホームとなるサッカースタジアムの建設が進んでいる。
完成は2020年の予定。町ではサッカーを中心にしたまちづくりが加速していくところだ。
この先の未来に、どんな町を描いているのか。新富町役場総合政策課 まちづくり推進室室長の比江島信也さんに話を伺った。
サッカーで県の拠点となるまち
—サッカースタジアムが建設されることになった経緯を教えてください。
比江島:新富町の魅力づくりを目的としたまちづくりに取り組む中で、地域で稼ぐ仕組みや雇用の強化もしていきたいと考えていました。
そこで、国有地も含めた約18ヘクタールの土地を使い、「宮崎県フットボールセンター」(県内で行われるサッカーの中心施設)をつくる構想がスタート。
素晴らしいタイミングでテゲバジャーロ宮崎さんから声をかけていただき、5,000人規模のスタジアム建設が動き始めたところです。
宮崎県の中心という利便性
—新富町での建設を決めた理由は何ですか?
比江島:細かく説明するといろんな要素がありますが、一番は利便性。
建設予定地は駅から徒歩7〜8分で、空港からのアクセスもいい。おまけに新富町は県のほぼ中心に位置するため、県内外からアクセスしやすいんですよ。
スポーツ振興で発展するまち
—プロジェクトを実現するにあたり、どのような苦労がありましたか?
比江島:大きな予算を必要とするプロジェクトなので、他のことに使った方がいいのではないかという声もありました。
このプロジェクトの重要性やスタジアムの必要性を町民の皆様に理解していただくことに時間をかけましたし、気を使った部分です。
—「なぜサッカースタジアムなの?」という声はありますか?
比江島:もちろん今でもそのような声はあります。
もともと新富町がサッカーの町というわけではありません。町内には少年団が1チーム、中学校も3校あるうち、サッカーチームがあるのは1校だけ。
野球の方がいいのではないかとの声も多数ありました。ただ、宮崎県はすでにキャンプ地としても有名で、整地された球場もたくさんあります。
そこに後から入るのは難しいですし、そもそも野球は市町村単位で予選をするため、1つの場所に県内全てのチームが集まることが少ない。
一方、サッカーは県内全てのチームが1ヶ所に集まって試合をするので、「県内のサッカー競技者が集まる新富町」にできる。
サッカーこそが、町全体を盛り上げられるスポーツだと考えたのです。
プロのプレーを身近に
—スタジアムができることにより得られるメリットは何ですか?
比江島:サッカー少年たちが気軽にプロのプレーを楽しめます。
プロがプレーするメインスタジアムと、一般の競技者が練習や試合をするフットボールセンターが併設される予定なので、子どもたちが練習や試合終わりにプロの試合を観戦できるようになります。
また、県内外のサポーターやサッカー関係者が、一年を通じて新富町に集まる機会が生まれます。
日向新富駅周辺や商店街などにも、少なくない経済効果が生まれると見込んでいます。
サッカーでにぎわう町の玄関
—今は静かな日向新富駅の周辺もこれから変化していきそうですね。
比江島:私が子どもの頃は、駅周辺は商店街のようになっていて、いろいろなお店が並んでいたんですよ。
そこから少しずつお店が減り、今のような静かな街並みになりましたが、スタジアムができれば町の玄関口として再び人の流れが生まれます。
テゲバジャーロ宮崎グッズはもちろん、飲食店、スポーツ用品店、宿泊施設などが生まれる可能性がありますし、サポーターが町内を回遊してくれるようになるかもしれません。
町全体がにぎわうイメージを描きながら、これからも計画を進めていきたいと思います。
サッカーを中心にしたまちづくりが進む新富町。
「テゲバジャーロ宮崎」のJリーグ入りは、プロスポーツのない宮崎県全体にとっても悲願。
ここまで大きく変わろうとしている町は、全国を探してもめったにないのではないか。