活動レポート

活動レポート

人気メガネブランド「JINS」の中で集中力について研究し、シンクラボ(Think Lab)というワークスペース事業などを手がける井上一鷹さん。集中できる働き方やクリエイティブな発想を得るヒント、コロナ禍の中で地方の持つ可能性などについて、こゆ財団の齋藤と語ったオンライン対談です。そこから導き出された、「時間と場所にとらわれず、より自分らしく生きる働き方」とは?

■開催:2020年10月1日(木)14:30~16:00
■対談テーマ:地方で生産性をあげて働く方法 集中力 ※オンラインURL
■ゲスト講師:井上一鷹氏
ジンズ Think Lab Gエグゼクティブディレクター 兼 Think Lab取締役
https://thinklab.jins.com/jp/ja/
<参考記事・サイト>
世界一集中できる場所をつくる。JINSで働く井上一鷹さんの仕事術
必要なのは、生産性を上げるための「集中時間」ではない。集中への大いなる誤解とは

■モデレーター
齋藤潤一
一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(こゆ財団) 代表理事/ 慶應義塾大学大学院 非常勤講師

■オンライン運営担当
稲田佑太朗
一般社団法人こゆ地域教育研究所 代表理事
https://www.facebook.com/koyulabo/

集中力を高めるオフィス空間
Think Labにみる計算された環境


▲こゆ財団のオフィス

宮崎県新富町にあるこゆ財団のオフィスは、緑を置いたり、フリースペース制を取り入れるなど、井上さんのアドバイスを得ながら造った「集中力が高められる」空間。地域の人材育成の場であったり、起業家たちのワーキングスペースとしても活用されている場所です。こうした空間が、「集中力を高める」とはどういうことなのでしょう。

集中できるオフィスの目指す方向について、井上さんは、
「人本来の体は、自然環境の中でこそ最適化されているんです。集中できる要素はそこにあって、緑に代表されるように、働く環境は自然に回帰していくことが今後の正しい方向だと思っています」と示唆します。


▲集中の研究の図

井上さんが手がけるシンクラボは、ジンズミーム(JINS MEME)という集中力を測るメガネ型デバイスによる計測結果を活用して生み出されたワークスペース。
どうやったら人は集中できるのか、横幅何センチの書斎が集中が続くのか、など、計測を元に、空間に落とした環境になっています。

実際に井上さんが計測して分かったデータでは、最も仕事に集中できる場所は、土曜日の昼の公園。反対に、95%以上の人が集中できない場所がオフィスでした。
なぜオフィスが集中できないか。それは、11分に1回は「ちょっといいですか」と話しかけられたり、電話やメールが鳴っているから。その度に人は深い集中から引き戻されているというのです。

相反する「集中」と「コミュニケーション」
両方を行き来する脳を作ること

しかし、「集中だけすればいいかというとそうではなくて、コミュニケーション(Co-work)と集中(Deep Think)の両方がないとイノベーションは起きない。集中した人たちが互いの仮説を持ち合わなければ新しいものは生まれない」と井上さん。

人には、集中して何かをまとめあげたり、メール処理をしたり、効率的に理性でこなす脳が働く時間がある一方で、リラックスしてアイデアが出てきたり、クリエイティブワークをしたりするのに使う直感系の脳が働く時間がある。その両方をうまく行き来できるように、自分を設計し直すことが大事だとも。

場所を変えることで
仕事内容にふさわしい環境を作る

たとえばオフィス内をあちこちに移動することや、自然豊かな地方と都会など多拠点で仕事をすることは、生産性が上がり、より集中力が高まるということなのでしょうか。

「そうだと思います。現代のコミュニケーションは、TPOのP(場所)を規定しないはず。また、受動的にやらされているものに対しては人は集中しにくいが、能動的にやりたいものに対しては集中する。私はその集中を『夢中』だと思っていて、その場所が都会か地方かは関係ない」(井上さん)

夢中になっている人とはどんな人なのか
その集中力の先に何を見ているのか

では、夢中になれる最大の良さはなんでしょうか。

井上さんは、「夢中の時間とは、自分の人生を生きている時間」と言います。

「シンクラボのブランドコンセプトが『リブユアライフ(Live Your Life)』。他人に干渉されずやりたいことを自由に見つめられる、そんな人生を夢中に生きていける環境が普通になればいいなと思います」(井上さん)


▲宮崎県新富町にある古民家一棟貸切宿「茶心」

最後に、今回の運営を担当した稲田が問いかけます。
Q:夢中になれるきっかけづくりはありますか?
A:計画的に夢中になろうというのは論理破綻していますよね。だから、自分は朝とか午後のこの時間とか、集中しやすい時間帯を見つけて、その時間や場所を当ててみること。自分からつかみに行くことです。

なるほど、夢中になれる時間と空間は、自分で選んだり、作り上げることができるんですね。
これから本を執筆する予定があるという井上さん。「新富町にある集中力が高められるように造った民泊のような場所を利用して執筆をするのもいいな」と、可能性を語りました。