お知らせ

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2020年コロナ禍にスタートした町内初・オンラインによる生涯学習講座『しんとみ学びフロンティア塾』も、11月30日でいよいよ今年度最終回。全6回、オンラインを活用して人の移動や三密を避けつつ、町民の学びたい意欲に応えてきました。
こゆ財団・教育イノベーション推進専門官の中山が初回からICT面で運営・進行を務めてきましたが、最終回は中山抜きで開催することに。同じくこゆ財団の橋本(新富町地域おこし協力隊)が派遣され見守るなか、新富町総合交流センターきらりを会場に役場職員オンリーで午前・午後の2部開催をやり抜きました。

フロンティア塾の大トリ講師は
本講座の立役者・石谷泰宏さん


最終回のテーマは「今と昔の子どもたち〜今の子どもたちをどう育て上げるべきか〜」。これまで企画と裏方に尽力されてきた町生涯学習課の石谷泰宏さんが登壇します。実は石谷さん、35年間教員を務め上げ、新富町立富田小学校の校長を最後に教壇を降りた人物。今も「石谷せんせー!」と気軽に声をかけられるほど、町民に親しまれている存在です。
進行役は、町生涯学習課の河野光典さん。各受講会場には同じく生涯学習課の職員たちがスタンバイ。中山とともに回を重ねてきた経験を生かして、オンライン講座の最終回スタートです。

▲スタート時に挨拶・説明をする新富町生涯学習課の河野光典さん

子どもを成長させた「ゼロからの体験」

新富町生まれ、4世代家族で育った石谷さん。兄弟と一緒に祖母や曽祖母と過ごし、近所のお兄ちゃんたちにいろんなことを教えてもらいながら育ったそうです。

差別・いじめ・仲間外しをしないこと、そして、何事も全力でやること。
教員として子どもたちに一貫して伝えてきたのは、このことでした。

少年野球の監督としても子どもたちを指導する立場に。年間120試合も行うという忙しい合間を縫って、一人でサイクリングに出かけるのが楽しみだったそうです。

そんな青年教師・石谷さんに、5人の生徒たちからあるお願いが。

「熊本に転校した友達に会いに行きたい。自転車で一緒に行って欲しい」
というのです。

子どもたちは親を、石谷さんは上司である校長を説き伏せ、宮崎県境から熊本まで、数日かけて子どもたちと自転車の旅を敢行したのです。

石谷さんや親たちと綿密に計画を立て、無理だと思われる壁もどうにか乗り越えて、肉体的・精神的に成長した子どもたち。この無謀とも言える旅は、一生忘れられない思い出となったそうです。

今、私たちは子どもたちにそんなゼロからの体験をさせられるでしょうか。子のいく先を先回りして危険を回避し、自分たちで考え判断する機会をうばってはいないでしょうか。

大人が「当たり前」を見直そう

ロンドンビジネススクール 教授であるリンダ・グラットン著『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』によると、2007年生まれの日本の子どもたち(現在の中学1年生)の半数が、107歳まで生きる可能性があるそうです。

上記のように、彼らが働き盛りの2050年頃は、凄まじい時代の変革・荒波の真っ只中と予想されています。そんな厳しい時代を生き抜くために必要な力は、決して詰め込みの知識ではなく、自らが考え、判断し、困難を切り開く力なのです。

Society5.0と呼ばれる超スマート社会は、電子機器(コンピュータ)が組み込まれたハイテクな社会。しかし、「コンピュータなど“道具”を使えるようになることが目的になっていないだろうか」と石谷さんは危惧しています。

自身の子ども時代、教員時代を振り返りながら、これからの時代を生き抜く子どもたちをどう育てていくべきか。親や学校だけではなく、私たち社会の大人も「当たり前」を見直し、本気で考えていかなければならないことを伝えてくださいました。

「見やすい」「聞き取りやすい」
受講生たちの喜びの声が後押しに

2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちの生活は一気に様変わり。町民の学びの場であった生涯学習講座も当初は開催できず、職員も町民も残念な気持ちでいました。
そんなとき、オンラインを活用した学びの場を創るという活路を見出した新富町。初めての取り組みで、しかも受講生はパソコン経験の少ない年配者とあって、スタート直前まで担当課の職員たちは「本当にできるのだろうか?」という気持ちが拭えなかったと話します。

▲大集会室で受講する受講生たち。毎回約20人が会場を分け、少人数で受講しました

第1回を開催した8月27日。終わってみれば、平均年齢74歳の受講生たちから「楽しくてあっという間だった」「久しぶりにワクワクした」と大好評。さらに聞くと、オフラインでは環境により遠くて見えにくい、聞き取りにくいという状況もありがちですが、オンライン講座は一人ずつ手元の端末で見るため「見やすい」「聞き取りやすい」といううれしい効果もありました。

そんな受講生たちのはつらつとした笑顔が、企画・運営する職員たちを後押ししたことは間違いありません。「年齢に関係なく、オンラインによる学びは創れる」ことが実証例として得られ、教育イノベーションを推進するこゆ財団にとっても貴重な経験となりました。

▲毎回受講されたご夫婦。ご主人はプライベートでもオンラインを活用するほどに。