企業×地域=無限の可能性を探る、というコンセプトのもと今年からスタートした「こゆチャレンジ大学(略してこゆチャレ)」。
第5回目はゲストに株式会社西日本新聞社の後藤孝行氏を招聘。「地域と共に歩み続ける」をスローガンに掲げ、144年の歴史を誇る西日本新聞社。越境したことで見えた後藤さんの視点を元に、地方メディアとまちづくりに取り組む地域商社だからこそ出来る連携をテーマに、こゆ財団の高橋との対談形式でオンラインイベントを開催しました。
■開催:2021年8月16日(月) オンライン開催
■対談テーマ:「メディア×地域商社が生み出すまちづくりの可能性」
■オンライン動画はコチラから(You Tubeページに飛びます)
■ゲスト講師:後藤孝行 氏(株式会社西日本新聞社)
■対談相手:高橋邦男(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 執行理事)
■モデレーター:有賀沙樹(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 広報イノベーション専門官)
需要が広がる
社会人インターンの受け入れ
こゆ財団に西日本新聞社から社会人インターンとして後藤さんが来てくださったのは、2021年4月。4か月経った今だからこそ見えたこと、地域商社という特殊な中での社会人インターン経験により感じたこと、気付いたことなどを改めてお伺いしたいということで、ゲストにお越し頂きました。
昨今、コロナ禍により多用な働き方が叫ばれる中、社会人インターンの活用に注目が集まっています。
「新しい道にチャレンジしてみたいけれど転職はハードルが高いから、期間限定で試し働きがしてみたい」
「多様性を育むために自社の社員に研修機会を創出したいけれど何をしたらいいのか分からない」
「同じ業種や業界では得られない考え方や思考を身につけたい」
元々は新入社員のギャップを埋めるため、新卒採用を見据えて学生向けに導入されたインターン制度ですが、ここ数年はベンチャー企業へのインターンを専門としたマッチングするサービスが生まれるなど、社会人インターンへの期待は年々高まっています。
こゆ財団では、他自治体や企業からの視察依頼が多くあり、その中で学生はもちろんのこと、社会人インターンを受け入れることも積極的に取り組んでいます。
日頃、まちづくりに取り組む私たちだから見えることもあれば、気が付かないうちに盲目になり見逃していることもあります。そんな時に、他業種・他業界の方がインターンとして入り、客観的な視線で新しい気付きを与えてもらえることはお互いにとって成長となります。
今回は、実際にこゆ財団で社会人インターンを経験した新聞社の後藤さんと、弊財団執行理事高橋の対談を通して、社会人インターンの可能性、そして地方メディア×地方商社のまちづくりの可能性について話しました。
いきなりのニラ刈りで始まったインターン
非日常を経験
企業理念として、「地域づくりの先頭に立つ」ことを掲げている西日本新聞社。これは、まちづくりを推進する私たちこゆ財団としても共感する想いが多々あります。
元々、地域づくりやまちづくりに興味があったという後藤さんが、こゆ財団でインターンとして取り組んだことからまずはお聞きしました。
後藤さん「最初はニラ刈りの体験に行きました。ただお手伝いをしに行くというわけではなく、余ってしまったニラをどう活用するかということを一緒に行った地域おこし協力隊のメンバーがすごく一生懸命に、自分事として考えられていたことが印象的でした」
刈ったニラの切り口からは水滴が落ちるぐらい新鮮で、なかなかできない貴重な経験だったと言う後藤さん。その後、財団メンバーの手作りお弁当を持ってお花畑で昼食を取ったことも非常に印象に残っていると言います。
他にも、ふるさと納税で新富町産の野菜を全国に発送している「野菜発送室」では、農家さんとのコミュニケーションが大事なことなど、現場の声を聞きながら実際に発送準備を経験いただきました。
また、一部インターン期間中はこゆ財団が管理する民泊茶心に宿泊いただき、茶の心を五感で味わうことが出来る施設体験もしていただきました。実際に宿泊して感じた課題や感想もフィードバックいただき、私たちとしても学ぶことが沢山ありました。
高橋「私たちが普段から町の中に接点を沢山持っているが故に、いきなりニラ刈りから始まるということになりましたが…戸惑いはなかったですか?」
後藤さん「そうですね、いきなりニラ刈りと言われてびっくりはしましたが…」
高橋「戸惑いがあったんですね(笑) 確か初日でしたよね?ニラ刈り。ニラの香りをまとって帰ってきた後藤さんを昨日のことのように覚えていますが、通り一遍な活動ではなく多様な経験をしてもらえたのは良かったかなと思いますね」
後藤さん「改めて思うのは、こゆ財団で働く方々が本当に魅力的だったなという印象ですね。会社で働いていると決まったことをしっかりとやっていかければならない部分が多いのですが、チャレンジフィールド(※)で働く人たちは自分のやりたいことをしっかりと考えて、そこにチャレンジしている方や模索して苦しんでいる方がいました。そういう方々と直に触れ合う機会があったことは財産になったと思いますね。普段の会社ではない非日常を味わえたと思います」
※チャレンジフィールド…こゆ財団は新富町を「世界一チャレンジしやすいまち」にするとミッションを掲げ、自らのオフィスをチャレンジフィールドと称して住所にも登録。オフィスの壁にも大きく文字が書いてあり、モデレーター有賀のZoom背景にも、このチャレンジフィールドの文字が大きく書かれています。
水面下で必死に水をかく水鳥のごとく
愚直に取り組む様子が印象的だった
高橋「私たちも現場で課題として向き合わなければならないことが日々ありますし、地域との連携の中でジレンマがあることもあります。だからこそ、後藤さんの感想に『苦しい』という表現が入っていたことは、嬉しいですね。地域づくりの現場ってすごく泥臭いんですけど、世間ではキラキラしたイメージは持たれることもありますからね。ギャップっていかがでした?」
後藤さん「実はそれにも通じる話なんですが、財団を知るきっかけになった記事があるので紹介しますね」
後藤さん「地方創生の星は見逃せないと思ってインターンを希望しましたが、実際にインターンをしてみて、星が星であるためには水面下での努力が欠かせないのかな、という風に思いました」
高橋も私もこの話を聞きながら、優雅に湖で泳ぐ水鳥が水面下で必死に足をばたつかせて泳いでいる様子をイメージしていました。必死に水かきをかいても全然前に進んでない…なんてこともあるのですが、そんな泥臭さで共通するものとして、毎週金曜日に実施しているチャレンジフィールドの掃除も後藤さんにとっては印象的だったと言います。
後藤さん「自分たちで使うスペースは自分たちで掃除するというのは、凄くいいなと思いました。それも上の人が率先してトイレ掃除をしていたのも印象的でした」
実は新富町の駅舎内からスタートしたこゆ財団。当時は駅の管理もしていたので、駅のお手洗いの掃除も財団メンバーが担っていたという私も初めて聞く話も飛び出しました。
高橋「まちづくりを推進する中で。会社という枠の中だけではなくて、町全体が財団の仕事場であるという意識は、その頃から変わらずありますね」
身近に起業に取り組むメンバーに触れて
チャレンジするハートの強さを学んだ
後藤さん「今まであまりしたことがなかったんですけど、ふるさと納税することが増えました。新富町以外にもしていますが、こういう風にお金が使われているんだとか、しっかり農家さんの元にもお金が届いているんだとイメージできるようになりましたね」
高橋「ニラ刈りから始まり、満遍なく色々な体験を後藤さんにしていただけたのは、良かったと思います」
今回、後藤さんは研修休暇という自社制度を使って社会人インターンに申し込んで下さいました。研修というと企業研修のイメージが大きいと思いますが、そうではなくて地域づくりに取り組むこゆ財団のような場に飛び込むというのは、社会人にとってどんな意味がありそうでしょうか?
後藤さん「地域おこし協力隊の皆さんは3年で卒業して起業しないといけないという期限もあるので、そういった方々に触れる機会と言うのは意味があると思います。どの企業もこれから事業を継続していくためには、新規事業や商品開発が必要になってくると思います。そのためにはチャレンジする気持ちが必要になってくると思いますので、起業の現場に触れることで重要な気付きが得られると思いますね」
リアルな場を活用して
町ごとメディアに
こゆ財団のインターンを通じて、財団はデジタルの活用は出来ているかもしれないけれど、リアルの活用と言うのは意外にまだ出来ていないのかもしれないと思った、と後藤さん。
例えば、財団の入り口にあるショーウィンドウ(元が店舗なのでショーウィンドウが残っています)の活用。通学の子どもたちや町の方々が通る交差点に位置するため、ここの利活用を考えられれば、もっと町の方々に向けたオンタイムの情報発信ができるという着眼点は、後藤さんならではでした。
他にも野菜発送室の前に貼っている手書きのレシピをメモしている方々がいたことに着眼し、レシピを持ち帰れるようにすることで継続的な情報発信になるなど、後藤さんの「町中をまるごとメディアに」という発想に高橋も大きく反応していました。
高橋「今日有賀さんが着ている『しんとみ』と書いているTシャツも1つのメディアですよね。実は、銀座の町を黄緑の新富Tシャツを着て歩いたことで、ふるさと納税に繋がった事例もあるんです(笑) 町中を走っている財団の車もメディアになるよね、ということで実は見積もりを取っているところです」
後藤さん「デザインにも非常に力を入れていますよね、それはオフィスの壁に書いてあるチャレンジフィールドの文字にも感じました」
高橋「ローカルとか都心とか関係なく、第一線のものを届けたいのでロゴなどデザイン、クリエイティブには非常に力を入れています。競合が少ない分、地元メディアにすぐ取り上げてもらえますので、チャレンジする機会は沢山転がっていますので、そういった意味でもチャンレジしたい人には来て欲しいですね」
絶賛、こゆ財団では採用にも力を入れています。地域おこし協力隊の募集もしていますので、こちらも気になる方はぜひご連絡ください。
また、これまで「ある1人」とのご縁が大きなご縁に繋がってきた事例が新富町には沢山あります。今回の後藤さんのインターンを機に、財団としても西日本新聞社さんとのご縁も広げていきたいと思います!
こゆ財団では今後も様々な掛け合わせを楽しみながら、新しい可能性の拡大へチャレンジして参ります。引き続きお楽しみください。
written by Saki Ariga