農業経営をゲームで体験。学びが深まる『産地デザインゲーム』
社会見学や研修などで、農家さんの話を聞いて畑で収穫体験。そんな経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。土の香り、新鮮な野菜のおいしさを現地で感じられる一方で、農業を続けるために欠かせない「経営」の視点は置き去りになりがちです。
そこでこゆ財団では、農業経営を疑似体験できるゲーム『産地デザインゲーム』を開発しました。地域の農家や制作会社とともにつくったこのゲームは、フィールドワークの学びをより深めることを目的としています。
その体験価値や効果はいかに?

社会人・学生が体験。農業経営を学ぶ『産地デザインゲーム』
『産地デザインゲーム〜SHINTOMIの宝を発信せよ〜』は、新富町の基幹産業である農業がテーマ。
新富町で実際に生産されている「米」「国産ライチ」「牛乳」を題材に、どの作物を選び、どのように産地を育てていくか、農家の右腕の「地域プロデューサー」となり経営を考えるゲームです。
参加者は3期にわたる農業経営を疑似体験しながら、より良い「産地づくり」に挑戦します。生産品の売上だけでなく、突発的なリスクや環境負荷など、実際に農業を経営する上で考慮すべき要素が組み込まれているのがポイントです。
2026年2月、宮崎大学による大学生と社会人向けプログラム「地域プロジェクト演習」が新富町で開催されました。こゆ財団はこの機会に、完成したばかりの『産地デザインゲーム』を初披露。社会人、学生、地元農家が一緒にゲームを体験し、その後は実際の畑や牧場を訪れるフィールドワークへと続きました。

ゲームでは、1人1枚ずつ専用シートを配り、こゆ財団・岡田が進行を担当。
資金やコスト、環境負荷も考えながら、それぞれが産地デザインに挑戦します。突発的にやってくる「ハッピー&リスク」や、ジャンケンで結果が左右される場面も。
ゲームと言えど、参加者の顔には喜びや落胆の表情が見られる楽しい時間となりました。

最終的に地域プロデューサーになれた人、なれなかった人と結果はさまざま。
短時間でも、農業経営や産地デザインの難しさや楽しさを体験する機会となったようです。

ゲーム体験が、農家への理解と共感を深める
ゲームの後は、農家さんと一緒に実際の畑や牧場へ。
実際にゲーム内にあった牛乳生産や有機米づくりの現場にも足を運びました。

開催後のアンケートでは、参加者から次のような声が寄せられました。
「ゲームでの気づきや学びによって、農家さんへの共感が増した」
「経営の裏側を意識しながら話が聞けた」
「より具体的な質問を投げかけることができた」
体験や視察での価値を高めるために、一定の効果があったと言えそうです。

『産地デザインゲーム』は、今後企業研修や行政向けワークショップにも展開するなど、活用シーンを広げていく予定です。
制作会社に聞く開発秘話
こゆ財団が制作を依頼したのは、ゲームを活用した学びをデザインする株式会社CUBE-X(キューベックス)社。
農場体験や視察が参加者のより大きな学びになるには?と模索するなか出合った、山梨県北杜市の「FARMAN(ファーマン)」の「農場経営ゲーム」をヒントに、新富町オリジナルで制作しました(代表の井上さんはじめFARMANのみなさんには、大変お世話になりました!)。
今回に先駆けて、こゆ財団社内でお試し開催を実施。その際に司会進行を担当してくださったCUBE-X代表の堀口学さんに、このゲームや新富町の魅力を伺いました。

ーー教育コンテンツ開発やアナログゲーム制作を事業としているCUBE-Xさん。どのようなゲームを作っているのですか?
堀口さん(以下、堀口):小学生から中高生、社会人まで幅広い層を対象とした、体験学習型のアナログゲームを主に制作しています。山梨県笛吹市では伝統的なブドウ栽培、茨城県ではスマート農業を取り入れたイチゴ栽培など、これまで多様なテーマの農業系ゲームを9地域で作ってきました。
ーーこれらの農業系ゲームの一番の価値や魅力は何でしょうか?
堀口:従来の農業体験は見る、聞く、知るといったインプット型の学びが多い中で、この農業系のゲームは自分で農場や農業経営をするという経営視点、アウトプットが大きな特徴です。
知ったつもりから、やってみた感覚で自分ごととして語れるというのがこのゲームの一番の魅力だと思います。
ーーどうしてアナログゲームなのですか?
堀口:コンピュータゲームだと、コンピュータ側が「ここは行っちゃいけない」「これはできない」と制御してきます。でも、アナログゲームは、ファシリテーターの話を聞きながら自分で判断し、みんなでルールを守りながらやっていくことで責任感が生まれます。
そのように、学びが多くコミュニケーションも生まれやすい点から私たちはアナログゲームにこだわっています。

ーーそんな農業系ゲームのなかで、新富町の『産地デザインゲーム』の特徴はどこにありますか?
堀口:今回、山梨県北杜市のFARMANさんと作った「農場経営ゲーム」をアレンジして制作しました。これまで他の地域のデームでは「1人の生産者」や「1つの産品」をメインにして制作していますが、新富町では複数の生産者と共同経営する「地域プロデューサー」という立ち位置でゲームを行う点が他と全く違います。
複数の産品をさらに「生産品」と「加工品」に分けているのも、私たちとしても初の試みでした。
ーーゲーム制作で新富町と関わりながら、どのような印象を受けましたか?
堀口:農家さんとこゆ財団とがいい関係を保たれていて、とてもいい地域だなと感じました。制作にあたり、普通はなかなか聞きづらい売上やコストなど数字の部分までヒアリングさせていただいて。私たちにとっても非常に良い機会となりました。
ーー今後、このゲームを通してどんな効果が生まれることを期待していますか?
堀口:外からの人に体験してもらうのはもちろんですが、地元の子どもたちにもぜひ体験してほしいですね。他地域では、学校の総合学習の時間に活用していただいているところもあります。
ゲームの世界だからこそ、気軽に失敗できる。失敗するからこそ感情が動く。農業という長い時間をかけて育てなくちゃいけないものを、短時間で擬似体験しながら、地域への理解や地元愛が深まるとうれしいです。
今後の展開
今回のワークショップを通して感じたのは、農業を「聞く・見る」だけでなく、経営の視点から体験することで、地域への理解や農家への共感が大きく深まるということです。
『産地デザインゲーム』は、地域の現場と学びをつなぐ新しいコミュニケーションツールになり得ると感じています。今後この『産地デザインゲーム』は、町内農家が学生インターンを受け入れる際の導入プログラムとしての活用や、他者と連携した大人向け共同プログラムとしての展開も検討しています。
農家訪問やフィールドワークに「経営体験」という視点を加えることで、地域や産業への理解はより立体的になります。教育旅行や地域学習の新しいプログラムとして、ぜひ新富町で体験してみてください。
お問い合わせ
こゆ地域づくり推進機構(地域資源セクション:岡田)



