前週まで終わらない夏だった気候が一転し、秋の深まりを感じさせた11月9日。日本遺産にも認定された、有数の歴史を誇る新田原古墳群に親しみを持ってほしいと、昨年度に引き続き「しんとみぶらぶら物見遊山 in Autumn @新田原古墳群」が開催されました。
新田原古墳群には、3世紀〜6世紀頃につくられたという古墳が200基も点在します。最大級の大きさを誇る前方後円墳・百足塚(むかでづか)古墳には、縁取るように灯りを配置。特設の展望デッキから会場を見下ろすと広がる幻想的な光景を、来場者は次々と写真に収めていきました。
古墳の前では、飲食など10店舗ほど出店のほか、伝統芸能のステージも披露されました。
篠笛奏者・物部聖子さんが篠笛の優しい音色を響かせたあと、古代をイメージした白い衣装を身にまとった「タカチホKAMIASOBI」のメンバーが登場し、幻想的な舞を披露。最後は笛と踊りのコラボを繰り広げながら、来場者が座るテーブルの間をめぐり、会場を沸き立たせました。
続けて披露されたのは、新田原古墳のある地域に伝わる新田神楽。笛と太鼓にあわせて奉納された緩急ある舞に、多くの人が見入っていました。
イベントスタートが17時30分と遅かったこともあり、少し冷え込んだこの日は、温かいグルメが大人気。フランス料理をベースとした料理を提供する宮崎市内の「Bistrot Pangolin」では、クラムチャウダーや牛肉のハチノス煮込みなどが多く売れたそうです。
ライトアップされた道を進み、百足塚古墳の裏手へぐるっとまわると、古代の生活体験ができるワークショップコーナーがありました。
古代と同じ方法で糸を縒(よ)りキーホルダーをつくる「糸つむぎ」、本物の石器を使ってドングリを割ってみる「ドングリつぶし」など、普段はなかなかできない体験に、子どもたちが目を輝かせながら挑戦していました。
慣れない手つきでドングリをパウダー状にするものの、量はほんのわずか。「これじゃお腹いっぱいにならないね」と昔の大変さを知るとともに、古代人の工夫と知恵を体感できたようです。
会場である新田原古墳群から出土した、本物の土器に触れるブースも。「パズルのようにバラバラの破片を組み合わせて土器の形を復元する」「火山灰の層からどの年代の人が使っていたものか判断できる」といった担当者の説明に耳を傾けながら、来場者はそっと土器を手に取っていました。
ほかにも古代風の衣装の試着や、古墳をイメージしたスタンプラリーも実施。さまざまな方面から、古墳に想いを馳せるイベントとなりました。
新田原古墳近くで牧場を経営し、牛乳を使用したドリンクやスープを提供していた「松浦牧場」の松浦さんは、「古墳のイベントにこれだけ多くの家族連れが来てくれるとは」と驚きを隠せない様子でした。
地元にすでにある資源を大切に活かし、町を訪れるきっかけをつくる。そんなイベントを今後も展開できたらと考えています。