2021年11月3日(水・祝)、新富町文化会館大ホールにて開催した「廣津留すみれ トーク&デュオコンサートin新富」。この日から来年1月30日(日)まで続く新富芸術祭2021のオープニングプログラムです。秋晴れの中、町内外から250名もの方々にご来場いただき、盛大に執り行うことができました。
【新富芸術祭2021】
2021年11月3日(水・祝)〜2022年1月30日(日)
https://shintomi-art.jp/
こゆ財団・有賀沙樹の司会進行のもと、同芸術祭プロデューサーを務める新富町地域おこし協力隊の甲斐隆児が、会場の皆様へご挨拶。どうして芸術祭を行うのか、何を発信したいのか、ステージ上で同芸術祭のコンセプトを伝えました。
国際的バイオリニスト・廣津留すみれさんとは?
そしていよいよ、メインゲストとなる廣津留すみれさんがステージへ。バイオリニストでありながら起業家でもある廣津留さんが、世界を舞台に活躍するようになるまで、そしてさらに高みを目指し学び続ける理由について、講演していただきました。
ここで改めて、簡単に廣津留すみれさんをご紹介します。
バイオリニスト。1993年大分市生まれ。3歳からバイオリンに触れ、4歳で英検3級に合格。大分の公立小中高校からアメリカの超名門校ハーバード大学・ジュリアード音楽院を首席で卒業。ニューヨークに音楽コンサルティング会社を設立した起業家でもあります。現在、新型コロナウイルス感染拡大に伴い帰国中。国際教養大学・成蹊大学で講師を務めながら、演奏活動のため全国を駆け回っています。
●廣津留すみれオフィシャルサイト
前例がないことは「交渉」する
小学校3年生で初めて音楽コンクールに出場し、「バイオリン弾くってこんなに楽しいんだ!」と感じたという廣津留さん。バイオリンがより好きになり、バイオリン優先の生活が始まります。中学校、高校でもぶれなかった、学業と課外活動(バイオリン)の両立。バイオリニストとして突き指や怪我は禁物なので、体育や家庭科の実技はレポート等で代替できないか、など先生と交渉しながら「自分がやりたいこと」を追求してきました。
そうやって身につけた「交渉する」というスキルは、後にグローバルな世界に飛び出した際にとても役立ったそうです。
わからないことは「英語で」ググる
高校1年生で初めてパスポートを取得し、音楽の国際コンクール出場のためイタリアへ。なんと優勝し、翌年全米ツアーへ参加することになりました。カーネギーホールでの演奏後にハーバード大学に立ち寄ったところ、その校風に魅了されます。「ハーバード大学に行きたい」と言う廣津留さんに、当時通っていた公立高校の先生はびっくり。同学校では生徒をハーバード大学に進学させたことがなく、これもまた「前例のないこと」だったのです。
前例がないと言われても、廣津留さんにとって諦める理由にはなりません。
いろいろ調べてみると、大分に居ながらオンラインでの受験が可能なことがわかり、また授業料についても様々な奨学金があるという情報を入手できました。実際、アメリカに渡りハーバード大学に通うことは、東京で私立大学に通うよりお金の負担は少なかったそうです。
「ネット環境がある今は情報が簡単に入手できる時代。日本語で検索するより英語で検索した方が、遥かに多くの情報がヒットします。これはぜひやってみてください」
“英語でググる”という大きなヒントをいただきました。
学業は最大限に効率よく
授業中は「先生の目を見て」話を聞く
バイオリンという課外活動に時間を割くために、廣津留さんが工夫していた行動があります。
・授業中は「先生の目を見て」先生の話を聞く
・わからないことはその場かその日中に質問する
学校にいる間に集中して知識を吸収することで効率よく学び、バイオリンの練習時間を確保。バイオリンという夢中になれるものに出会えたことで自分の「軸」ができ、周りに左右されることなく目標を目指して頑張ることができたそうです。
ハーバードでの生活は
世界の社交界への第一歩
猛勉強の末に地方の公立高校から塾も通わず、現役でハーバード大学に合格した廣津留すみれさん。どんな学生生活を送っていたのでしょうか。
寮に入り朝はおおよそ9時頃起床。授業に出て、バイオリンを練習し、食堂では仲間とスタディセッションしながらの食事。夜は22時頃から図書館へ。英語でのレベルの高い専門的な講義や課題は本当に大変で、勉強していたらいつの間にか夜明け前だったことも。「目が開いている間は勉強していた」と振り返ります。周りにも同じように勉強している仲間たちがいたので、辛くはなかったそうです。
日本と大きく違うのは、自分の意見を述べない人はそこに居ないのと同じという考え方。日本人の特徴をわかっている先生たちが、授業で発言しやすいようサポートしてくれたおかげで徐々に発言することができるようになったとか。
ハーバード生には、いくつか共通する特徴があるといいます。
・自己肯定感が高く、とにかくポジティブな人が多い
・自分に自信を持っている=他人への嫉妬がない、他人をリスペクトする
・人と比べるのではなく「高め合う」
・社交力で一生モノの人脈がつくれる 等
将来どこかの国のトップに立つかもしれない、未来のリーダーたちが集まる大学。そんなハーバードで学ぶ人たちの特徴こそ、グローバルの舞台で通じる資質と言えるのかもしれません。大学側も意図して社交の場をつくっていて、立ち振る舞いから人との繋がり方、自己アピールの方法等を身に付けることができた廣津留さんは、この時期にとても大きな人脈を得ることができました。
大学3年時の世界的チェリスト、ヨーヨー・マさんとの出会いで、音楽を本格的に追求することを決心し、卒業後はアメリカのジュリアード音楽院に入学。バイオリニストとしてのスキルや資質を高いレベルで学ぶことができました。さらに、母である廣津留真理さんと立ち上げた教育プログラム「Summer in JAPAN」等、後の教育活動や慈善活動にもヨーヨー・マさんの影響が大きかったそうです。
目標を立てて、やるべきことを細分化
日々のTODOリストで思考もクリアに
ハーバード大学合格を目指した高校時代、ハーバード生になってからのオール英語でのハイレベルな学業など、「本当に大変だった」と振り返る廣津留さん。それをやり遂げられた要因の一つが「TODOリスト」の活用です。
目標達成に必要な情報をリサーチして細分化し、そのために今日やるべきことをTODOリストに書き出す。できたらチェックを入れて全部終わったら捨てる、ということを日々行うことで、着実に目標に近づけて頭の中もスッキリします。
「1日5分、目標を見つめてやることを書き出す時間をつくってみてください」
やることを終えたら、好きなことをするご褒美タイムも大事。
疲れていて集中できないなら、15分ほどのパワーナップ(昼寝)をする。
そうすることで思考がクリアになり、パフォーマンスも上がるのだそう。
学生も社会人も主婦の方でも、会場にいる誰しもが真似できる方法を伝授してくださいました。
楽しくポジティブに、
目の前の登りたい山を登ってみよう
大分から世界へ飛び出し、学業でもバイオリンでも世界のトップを経験してきた現在28歳の廣津留すみれさん。講演を通して、たくさんのメッセージを伝えてくれました。
「今日の常識は明日には時代遅れです」
「常に情報のアップデートを」
「長期目標はなくていい」
「やりたいことを仕事にしよう」
「自分のやりたいことをたくさん持っている方が、いろんな世界が見える」
「これからはオタクとポートフォリオの時代」
「無駄なことはなにもない」
バイオリンという山に登ってみたら、世界にはすごい人がたくさんいて、さらに好奇心が湧いたという廣津留さん。さらなる高みを目指しながら、興味のある他の山にも果敢にチャレンジしています。
最後は、会場の皆さんが廣津留さんに質問するQ&Aタイム。
「廣津留さんの軸は何ですか?」
「学びに対するモチベーションはどこから?」
「今後の展望は?」
など、会場から次々に質問が上がりました。
時間の許す限り、一つひとつ丁寧に答えていただきました。
自分の直感を信じて、目の前の山に登ってみよう。
地方に住む子どもや若者たちの指針となるような廣津留さんの講演に、大きな拍手が送られました。
後半はバイオリン&ピアノのデュオコンサート
廣津留すみれさんの講演終了から、10分間の休憩。その間にサプライズ登場したのは、今年4月に誕生したばかりの新富町公式キャラクター・おとみちゃん。来場者にごあいさつしたり、一緒に写真を撮ったり。ちょっとしたふれあいの機会がうまれていました。
そしていよいよ、廣津留すみれさんのバイオリンとピアノのデュオコンサート。ピアニスト・河野紘子さんもステージに登場し、トークを交えながら5曲を披露していただきました。
*演奏曲目は以下の5曲です
1. チャイコフスキー:「なつかしき土地の思い出」より メロディー
2. バルトーク:ルーマニア民俗舞曲
3. クライスラー:前奏曲とアレグロ
4. ポンセ:エストレリータ
5. サラサーテ:チゴイネルワイゼン
会場はプロが奏でる楽器の音色に包まれて、来場者たちは生音で聴く貴重な機会を存分に堪能していました。
演奏終了後、新富芸術祭ディレクターよりお二人へお礼の品(新富町特産品詰合せ)を進呈しました。
世界で活躍する廣津留すみれさんの、これからの時代を生き抜くヒントが詰まった講演とプロによる貴重な生演奏。新富芸術祭の開幕を彩る素晴らしいプログラムとなりました。