企業×地域=無限の可能性を探る、というコンセプトのもと今年からスタートした「こゆチャレンジ大学(略してこゆチャレ)」。
第8回目はゲストにHash DasH株式会社(以下Hash DasH)の取締役 三好美佐子氏を招聘。革新的で先進性のある証券会社を目指し、皆が驚くような斬新な発想と、シンプルで分かりやすい機能を組み合わせ、簡単で親しみやすいサービスの提供を目指しているHash DasH。
ホスト役は「世界一チャレンジしやすいまち」をビジョンに掲げ、企業連携や人財育成の企画・運営を通じて関係人口創出に取り組む、地域商社こゆ財団。
従来通りの「地方創生」という枠組みの中では交わることのなかった2社による、オンライントークセッションを実現。「地域資源への投資を通じたSDGs」をテーマに、継続的な可能性について考えました。
■開催:2021年11月22日(月) オンライン開催
■対談テーマ:「まちづくりにおける地域資源への投資の方法とは?」
■オンライン動画はコチラから(You Tubeページに飛びます)
■ゲスト講師: 三好美佐子氏(Hash DasH株式会社取締役)
■対談相手:高橋邦男(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 執行理事)
■モデレーター:有賀沙樹(一般財団法人こゆ地域づくり推進機構 広報イノベーション専門官)
チャレンジを資金面でも応援し
地域商材を持続可能なビジネスへ
「世界一チャレンジしやすいまち」というビジョンのもと、『特産品販売』と『起業家育成』を行いながら地域経済の創出に取り組んでいるこゆ財団。主に、1粒1000円の国産ライチの販路開拓や、ふるさと納税の委託業務、起業家育成塾などを実施しており、この『自ら稼いで人財育成に投資する』モデルは国の地方創生優良事例にも選出されています。
そんな『自ら稼ぐ』に取り組んでいる私たちこゆ財団だからこそ、様々な分野で自らチャレンジをするメンバーが集まってきます。地域おこし協力隊のメンバーは最長3年の任期で、卒業後は起業して活動していくことを目標に活動をしています。
パパイヤ王子として活動する岩本脩成くんもその1人。2021年の夏にはクラウドファンディングサイトMakuakeを活用して新商品開発に挑戦。クラウドファンディングが成功した後も、歩みを止めることなくまた新たな商品開発に取り組んでいます。
クラウドファンディングの事例にも見える様に、チャレンジに前向きなメンバーが事業を持続可能なものにするためには資金調達は欠かせません。
私たちこゆ財団として「世界一チャレンジしやすいまち」を実現するためには、環境や場所、人財に留まらず現実的に資金面でもチャレンジを応援することができる仕組み作りが必要と感じています。
そこで、今回はデジタル証券の分野で革新的なサービス開発に取り組むHash DasH株式会社の取締役三好さんを迎え、地域の不動産資源を活用した新しい稼ぎ方の可能性について話していきます。
お客さまの愛を受け取り
信頼を担保にする投資
ゲストである三好さんは、1990年に東京証券(現東海東京証券)に入社。投資信託商品本部に所属後、インベスコ、プルデンシャル、ソシエテジェネラルなど資産運用会社でマーケティング、カスタマーサービス、商品開発に携わります。2004年、ユナイテッドワールド証券取締役としてBtoBビジネス構築に参画。途中、銀行のダイレクトマーケティングやおつり投資サービス等にも関わりを持ちつつ、2014年には「One Tap BUY(現PayPay証券)」の創業、2021年より証券会社であるHash DasH株式会社のサービスリリース準備に参画されています。
Hash DasHではブロックチェーンを使って株式や債券、有価証券などの投資商品を発行・売買するビジネスを来期リリースに向けて現在準備しています。まだ聞きなれない言葉ですが、Hash DasHはデジタル証券を取り扱う会社で、代表である林和人氏にとっては3つ目の証券会社立ち上げとなり、ブロックチェーンを使ってあらゆるものを投資対象にしたいという想いで創業されています。
高橋「財団として3年前から地域おこし協力隊のサポートをしており、年明けには協力隊を卒業し新規事業を本格的にスタートするメンバーが出てきます。そのための資金調達の方法として彼らが直接金融機関さんとやり取りするということはこれまでもありましたが、私たちが間に入ることでよりスタートしやすくなるような仕組みを作ることができればいいなと考えています」
例えば、クラウドファンディングという手法は数年前に比べると格段に認知度が上がり、市民権を得ています。起業家に限らず、町民の方々が何かやってみたいと思った時にもっと気軽に使えるようになるなど、手段としての認知度向上はまだ取り組む余地はありますが、『投資』という観点から見るとどんな可能性が秘められているのでしょうか?
三好さん「投資と言うとちょっと生々しいですよね。単なるお金のやり取りだけであれば元々飽きっぽいタイプなので続けていないと思います(笑)」
投資業界に30年以上いるという三好さんは、業界への想いを持つきっかけとなった20代の時のエピソードを話してくださいました。
三好さん「沢山の方々からお金をお預かりし、プロのファンドマネージャーがそれを売買して損益をお返しするという金融商品を扱う投資信託の会社で、カスタマーサービスを担当していました。ある時、購入したファンドの商品が値下がりしていることで激怒し、問い合わせしてきたお客さまがいらっしゃいました。アジア通貨危機により一時的な現象であることなどを説明しても怒りが収まらないので、困った私は『なぜこのファンドを買ったのですか?』と質問をしました」
まさかの逆質問に、ヘルスサイエンスファンドを購入されていたお客さまは、「今後世界的に高齢化社会が進み成長する業界と予測しているから、薬や健康に関わるファンドに投資をした」と答えたそうです。それを受けて三好さんは、「ではそのシナリオはもう信じていないということですね?」と追い打ちをかけるように再度聞いたと言います。
三好さん「するとそのあとお客さまが10秒ぐらい沈黙されて、当時の私は『やばい!(さらに怒られる…)』とハッとなったんですね(笑) でも、お客さまの次の一言は『ごめんね』でした」
続けて「これからも高齢化社会が進むという予測や健康産業が成長して欲しいという僕の気持ちは変わっていなかった。もうちょっと待ってみるよ」と言って、激怒されていたお客さまは電話を終えられたそうです。
他にも色々なお客さまと関わる中で、三好さんは金額が大きい小さいに関わらず、『信頼を裏切られた』と感じたお客さまからのご意見が厳しいと気付いたと言います。
三好さん「増えればいいな、というギャンブル的な投資ではなく、特に成長を願う分野に投資をして尚且つ自身の財産も増えたらいいな、と想いを持って投資した方にはある種の愛があると感じます。一般的な株式の売買だとしてもあえて嫌いな企業に投資はしないと思いますので、そこにも愛があると気付きました」
これを受け、投資ってもっとドライなものだと思っていたのでびっくりしたという高橋。投資の先には必ず人がいますよね、という三好さんの話にも深くうなずいていました。
デジタル証券という選択肢で見えてくる
新しい地域活性のかたち
「投資はギャンブルではない」と言い切る三好さん。これからHash DasHで実現させていこうとするサービスについてもお伺いしました。
三好さん「実は最初に考えているのは地方創生で、高齢者施設が入っているある地方の大きな不動産を考えています。この高齢者施設がまた素敵で、単に余生を過ごせればいいと言う老人ホームではなく、ご高齢の方の自立や介護度向上を促しているんですね。全体は30億円の不動産ですがこれを小口化して1口10万から投資できるようにする予定です」
空き家再生のためのクラウドファンディングなど一部投資という側面を持った地方創生事例は目にするものの、三好さんが話して下さったような投資という切り口での地方創生はまだ類を見ないと感じました。他にもフェアトレードなどの社会課題解決に取り組む企業、分野への投資に興味関心を寄せているという話も出ました。
高橋「空き家再生とひと口に言っても、結果的に多世代交流の拠点になったり居場所作りになったりと結果的に社会的インパクトが大きくなることが多々あります。ただ、相変わらず投資してくれる人との接点をどうしたら増やせるのかは私たちも分からないでいます」
三好さん「そういう意味ではデジタル証券ってすごく相性がいいですね。想いの乗ったお金を集めると言うとクラウドファンディングという手法がありますが、1年間で集められる金額や1人の投資家が投資できる金額に制限があるんですね。その点、デジタル証券は金融庁が監督している証券会社だけが扱えるということで金額の制限がないので、クラウドファンディングの大きくてより安心版と思っていただけるといいかと思います」
三好さん曰く、例えば1つの商店に支援となるとクラウドファンディングですが、デジタル証券となると『ここからここまでの商店街全部を支援』という大きなイメージになると言います。また、デジタル証券はブロックチェーンを活用しているため、売買が可能というメリットもお話いただきました。
とは言え、デジタル証券の業界もまだ成長中で、現在出ているデジタル証券は証券会社が一旦買い取ってお客さまに売買する方式ですが、あと2~3年もすると直接の売買ができる仕組みが出来てくるだろうと言います。
応援したいと思って投資したものの、万が一資金が必要になった場合は換金することもでき、また証券会社が持つ販売網を活用してマーケティング活動してもらえるので全国各地から支援を呼び込むことが可能だという話は、これからの地域活性分野で大きな可能性を感じる話でした。
注意点としては、金融庁管轄下であるので会計監査などの面でコストがかかる分、金額としても10億などある程度大きな金額との相性がいい方法がデジタル証券だそうです。
リターンとしては商品に限らず、体験などの無形財産も設定が可能と聞き、地域の特色に合わせた提案ができそうという点で非常に面白いと感じました。これまでの資金調達法では実現が難しかった継続性、持続的な支援という点においてデジタル証券が地域活性の新たな可能性として風穴を開ける日も遠くない気がします。
まずは年明け、三好さんに新富町へお越しいただき現場を見ていただきながら実現性や将来性の話しができれば!と高橋からのラブコールもありましたので、引き続き可能性を探っていきたいと思います。
こゆ財団では今後も様々な掛け合わせを楽しみながら、新しい可能性の拡大へチャレンジして参ります。引き続きお楽しみください。
written by Saki Ariga